愛のマンション塾
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◆マンション購入コラム 第二回
中古マンションの選び方の基本②
INDEX
15階建てマンションは、果たして買いか?
小規模マンションは、果たして買いか?
タワーマンションの低層階は、果たして買いか?



15階建てマンションは、果たして買いか?

これまで、20階建て以上の高さ60mを超える「超高層マンション」(俗に言うタワーマンション)ができるまでは、14階建ての高層マンションが主流でした。
しかし、タワーマンションが続々と建てられ始め、高層型マンションが一段の人気を博すと、今度は14階建てマンションに代わって、15階建てマンションが登場するようになりました。

そもそも、高層マンションで14階建てマンションが多かった理由としては、建基法による「非常用エレベーターの設置義務」とその「緩和規定」が関係しています。

建基法では、基本的に、高さ31mを超える建築物には、非常用エレベーターの設置義務があります。
高さ31mを超える建築物というと、通常は、11階建て以上の建築物がこれに該当します。

この非常用エレベーターですが、これは、火災時に消防隊員が高層階の消火・救助活動を円滑に行うためのエレベーターで、乗降ロビーの広さや設備の基準、非常用電源の確保、中央管理室との電話装置、かごを呼び戻す装置、かごの戸を開いたまま昇降させる装置などの詳細規定があり、設計者としては、これらのコスト面からも、できれば、回避したい設備の代表格となっています。

そして、この設置義務規定にも、次のような緩和規定があります。
●31mを超える部分の各階の床面積が、500㎡以下で、
●31mを超える部分の階数が、4以下で、床面積合計100㎡毎に防火区画されている。などの場合には、非常用エレベーター設置は免除されます。

通常、マンションを設計する場合の階高は、約3mですので、11階部分の床スラブレベルが高さ30m程となり、ちょうど11階の階高の2分の1以下の部分で、高さ31mを超えることになります。よって、この場合は、11階からが、31mを超える階とされるので、10階+4で、14階建てまでが、上記の設置緩和規定に該当します。

これまでのマンション設計では、このように、階高約3mで、10階+4=14階建てという発想がスタンダードでした。
しかし、近年は、都心部のマンション好立地が減少したことから、より効率的なマンション設計が求められるようになりました。

そして、上記のように、高さ31mを超える部分の階数の判定については、一般的には、高さ31mを超える部分が、その階の階高の2分の1を超える場合には、その階は、高さ31mを超える階とはしない、という行政等の判定基準を採用していますので、
近年のより効率的なマンションの設計では、階高を3m弱にして、11階部分の階高の2分の1を超える部分を、高さ31mを超える部分にすることによって、12階からを31mを超える部分の階とし、11階+4で、15階建てでも設置緩和規定に該当させる、という手法が取られるようになりました。※以前から15階建ての高層建築物はありましたが、分譲型マンションの設計においては、スタンダードではありませんでした。

この15階建ての場合の各階の平均階高は、計算上最大で約2.95m確保できますので、特段の制約がない限り、設計上特に、室内天井高が低すぎるということはないと思われます。また、何らかの制約があり、この階高の最大値が確保できない場合においても、二重床+リビングのみ直天。あるいは、直床(あるいは、低い二重床)+水回りのみ段差スラブ+二重天などの仕様変更の検討で、従来の14階建てマンションとさほど変わらない「居室の室内天井高」の確保が可能となります。(仮に、二重天+二重床の場合→階高2,950ミリ-床スラブ厚200-天井懐150-床懐150=室内天井高2,450ミリとなる) また、アウトフレーム逆梁工法などと組み合わせて、サッシ高をより高くすることで、視覚的に室内天井高の圧迫感を緩和させることも可能です。

よって、これからますます増える15階建てマンションを、15階建てだから、一概に「良い悪い」と判断することは難しい状況になっています。
ただ、住戸内の床や天井の仕様については、それぞれ一長一短がありますので、以下にまとめてみます。

◆直天のデメリット: 電気配線がスラブ埋め込み(配線を変える場合は、露出となる)
◇直天のメリット: 上階からの重量床衝撃音(LH)が二重天より有利。天井のコンクリート仕上げ精度が高い。
◆二重天井のデメリット: 上階からの重量床衝撃音(LH)が直天より不利。天井のコンクリート仕上げ精度が低い場合がある。
◇二重天井のメリット: 電気配線の自由度が高い。給水給湯の天井配管に対応できる。

◆直床のデメリット: 段差スラブの場合、リフォーム時の設計自由度が低い。給水管がコンクリート埋め込みの場合がある。
◇直床のメリット: 下階への重量床衝撃音(LH)が二重床より有利。床スラブのコンクリート仕上げ精度が高い。
◆二重床のデメリット: 下階への重量床衝撃音(LH)が直床より不利。床スラブのコンクリート仕上げ精度が低い場合がある。
◇二重床のメリット: リフォーム時の設計自由度が高い。全室バリアフリーに対応できる。

以上のように、15階建てマンションを購入検討する場合には、居室の室内天井高がどれ位確保されているか?サッシ高はどうか?床や天井の仕様はどうなっているか?などを十分確認して下さい。

それと、もう一つだけ、あくまで将来的な危惧ですが、15階建てマンションの場合、従来の14階建てマンションより、容積率をギリギリまで消化しているマンションが多い可能性があります。仮に、設計上、容積率が一杯まで消化していれば、将来の建て替え時には、不利な条件となります。

容積率に余裕があれば、将来の建て替え時に容積率一杯に再建築し、その増えた戸数分を外部に売却することによって、居住者の建て替え負担を軽減させることができますが、容積率に余裕がない場合には、それができないため、居住者の負担が大きく、建て替え決議自体ができなくなる場合もあります。これは、特に築年数の経過した中古マンションを購入する場合には、検討項目の一つとなると思われます。
※但し、上記でも触れましたが、近年の都心型マンションの場合には、マンション好立地が不足していることから、15階建てマンションに限らず、容積率に余裕のあるマンションは、そう多くはないと思われます。


その他に、14階建てマンションと15階建てマンションについて、建基法関連や建て替え等以外の問題としては、
消防庁による共同住宅等の特例基準通達「220号通達」及び、「総務省令第40号・消防庁告示第17号」というものがあります。

これによりますと、
●開放廊下型マンション(内装準不燃材以上)の場合には、11階から14階までは、共同住宅用スプリンクラー設置免除。
●開放廊下型で、かつ、2方向避難が確保されているマンション(内装準不燃材以上)の場合には、
共同住宅用スプリンクラー全階設置免除。 という規定があります。

つまり、ほとんどの15階部分の部屋では、共同住宅用のスプリンクラー設置は免除されていると思われますが、
上記のように、開放廊下型でも、2方向避難が確保されていない15階部分の部屋の場合には、住戸内の厨房、居室、収納室(4㎡以上)において、水平距離2.6m以下包含かつ13㎡以下ごとに共同住宅用スプリンクラーの設置が義務付けられています。
なお、平成8年以前に建築されたマンションでは、共同住宅用スプリンクラーが設置されていないマンションもあります。

ちなみに、内廊下型マンションの場合には、上記緩和規定が適用されませんので、通常の規定通り、11階以上の階全ての部屋で、上記共同住宅用スプリンクラーの設置が必要となります。


※尚、一部に、同一総戸数で比較した場合、15階建てマンションは、14階建てマンションより建築コストの関係から、1戸当たりの分譲価格を安くできるという見解がありますが、この分譲価格の設定については、躯体の建築コストだけでなく、各種細部の仕様や設備のグレード及び、デベロッパーの販売戦略、利益率等により、各マンション毎で個別に設定されていますので、一元的に、購入者にそのメリット(価格の割安感)が享受されるかどうかは、難しいところだと思います。中古マンションの場合には、また違った要素が加味されますので、尚更です。


小規模マンションは、果たして買いか?

たとえば、総戸数100戸以上の大規模マンションであれば、そのメリットは、規模の利益であり、管理費や修繕積立金が割安になるというこが、容易に想像できます。
しかし一方、小規模マンションだと、大規模マンションのような規模の利益が享受されないので、維持費面で割高になるなど、デメリット面は、直ぐに思い浮かぶのですが、ことメリットとなると、答えに窮するという方が、大半ではないでしょうか。

それでは、総戸数40戸以下などの小規模マンションのメリットは、一体どこにあるのでしょうか?
小規模マンションのメリットを考察するには、まず、小規模マンションの敷地面積と建物階数の関係を見る必要があります。

大別すると、
①敷地が狭いため、1フロアの戸数が少なく、その分階数が高いマンション(都心型小規模マンション)
②敷地が広いため、1フロアの戸数が多く、その分階数が低いマンション(郊外型小規模マンション) に分けることができます。
以下に、それぞれのメリットを考察してみます。

◆高層型小規模マンションのメリットとは?
①1フロアの戸数が少ないので、角部屋の比率が高い。(採光性や通風性がよく、開放感がある)
②1フロアの戸数が少ないので、近隣関係が煩わしくない。(プライバシーを確保しやすい)
③1フロアの戸数が少ないので、設計自由度が高い。(ゆったりした間取りを確保しやすい)

◆低層型小規模マンションのメリットとは?
①階数が低いので、最上階住戸の比率が高い。(上階からの騒音がない)
②階数が低いので、一階住戸の比率が高い。(専用庭等を利用できる)
③階数が低いので、居住者間のコミュニティが形成しやすい。(戸建て感覚で暮らせる)

こうして、客観的に考察してみると、小規模マンションにも、魅力的な要素が多いことが分かります。
小規模マンションは、維持費面でのデメリットにあまり頓着しない向きには、意外にお勧め度の高いマンションかもしれません。

ただし、都頃型小規模マンションである「高層型小規模マンション」の場合には、
音環境面(騒音面)でのデメリット、冷暖房コスト面でのデメリット及び、大規模修繕費用面でのデメットなどが、「低層型小規模マンション」以上に顕著なことを、付け加えておきたいと思います。


タワーマンションの低層階は、果たして買いか?

全国のタワーマンションの年度別供給数をみると、
2009年の128棟を頂点に、その後のリーマンショックや東日本大震災の影響から、年々下降気味(2017年は40棟)ではありますが、2018年以降の完成予定数を見ると、2018年~2021年までの4年間で、203棟。2022年以降でも、91棟とタワーマンションの供給は、今後も大都市圏を中心に増え続ける見込みです。

仙台市でも、現在30棟弱のタワーマンションのストック数がありますが、2019年以降完成予定(勾当台地区・あすと長町地区)のタワーマンションが5棟もあり、やはり全国的傾向同様、今後も増加傾向にあるようです。

一般に、タワーマンションは、ステータス性があり、リセールバリューにおいても資産価値が高いという理由で購入する方が多いのですが、では、タワーマンションの低層階はどうでしょうか?タワーマンションの低層階について、わたくし独自の視点で考察してみようと思います。

まず、タワーマンションの低層階のメリットを見てみます。
①中上層階よりリーズナブルな価格で、ステータス性が手に入る。
②豪華な共用部分や充実した共用施設を、中上層階の居住者と差別なく利用できる。
③中上層階より、耐震性が高い(地震時の揺れも少ない)
④中上層階より、災害時の避難性が高い(EV停止時、非常階段の昇降が楽)
⑤中上層階より、風切り音が少ない。
⑥特に上層階より、暖房費コストが安い。

一方、デメリットとしては、
①折角タワーを買っても、眺望性があまり良くない。
②エレベーターで乗り合わせた時、低層階のボタンを押すのが恥ずかしい?
③低層階なのに、階段が利用できない。
④低層階なのに、通常のマンションより固定資産税が高い。
⑤低層階なのに、中上層階と同じ固定資産税である。
⑥リセールバリューが意外に低い(ただし、マンションの立地による)  などが挙げられます。

上記デメリットの中で、特に③と④・⑤について解説します。
③の「低層階なのに、階段が利用できない」ですが、
これは、15階建て以上の高層マンションで、特別避難階段(屋内型階段で一定基準のもの)が設けられている場合には、非常時以外は、この階段は使えないようになっています(階段を降りた1階部分に防火戸があり、通常は施錠されていて自由に出入りできない)

よって、たとえ2階に居住していたとしても、常にエレベーターを利用しないと、1階に降りられないことになりです。そうでなくても、タワーマンションは、時間帯によりエレベーターが込み合うので、低層階居住者は、中高層階居住者以上にストレス要因となるかもしれません。
ただ、タワーマンションには、必ず大型の非常用エレベーターがありますので、エレベーター渋滞回避?のためにそれを利用することもできます。

次に④の「低層階なのに、通常のマンションより固定資産税が高い」についてですが、
これは、タワーマンションの場合、元々固定資産税の建物評価額自体が、通常のマンションより高い上に、固定資産税の課税標準となる「課税床面積」が、通常のマンションより広い、という2つの要因が関連しています。

固定資産税の「課税床面積」というのは、自己所有の専有床面積(内法面積=登記面積)に、建物共用部分床面積(壁芯面積)の持ち分割合分の面積を足した合計床面積ですが、タワーマンションの場合には、通常のマンションより共用部分が充実している分、その分の建物部分の固定資産税負担も多くなるということになります。

それでは、固定資産税の「課税床面積」と「建物部分の固定資産税額」について、
仙台市内郊外で、ほぼ同一価格で、築年数が共に30年弱のタワーマンション(低層階)と、低層型マンションの実例で比較してみます。

◆低層型マンションが、専有部分内法面積 66.81㎡に対して、課税床面積 73.65㎡で→比率1.10倍
◆タワーマンションで、専有部分内法面積 61.75㎡に対して、課税床面積 88.44㎡で→比率1.43倍  となっていて、専有部分面積の狭いタワーマンション低層階の方が、課税床面積では、逆転して広くなっています。

そもそもの固定資産税の建物評価額単価が、低層型マンションで、60,810円/㎡。タワーマンション低層階で、72,780円/㎡と、タワーマンションの方が割高な上に、上記のように課税床面積も広くなりますので、年間の建物部分の固定資産税額・都市計画税額では、

◆低層型マンション→課税標準額 4,478,600円×(1.4%+0.3%)= 76,100円
◆タワーマンション→課税標準額 6,436,600円×(1.4%+0.3%)=109,400円  となり、年間で約33,000円タワーマンション低層階が高いことになります。

そして、⑤の「低層階なのに、中上層階と同じ固定資産税である」ですが、これは、上記④と密接に関係しています。
上記の事例のように、通常のマンションより割高な固定資産税も、タワーマンションの付加価値性を考えれば、妥当なようにも思えますが、問題は、低層階住戸も、より付加価値の高い中高層階住戸も、固定資産税上、同一評価額。同じ固定資産税を負担しているという点にあります。
つまり、低層階住戸は、固定資産税上、割高感があるということです。

ただし、2018年1月1日以降課税対象となる新築タワーマンション(高さ60m超で、2017年4月1日以降売買契約の物件)からは、高層階と低層階で固定資産税額に格差を持たせるよう計算方法が見直されることになりました。

その概略ですが、今までは、マンション1棟全体の固定資産税額を階層に関係なく、各住戸の専有床面積に応じて、単純に按分していたのですが、今回からは、マンション1棟全体の固定資産税額を、各住戸の専有床面積に、「階層に応じた補正率」を掛けてから按分することになりました。
具体的には、建物の中央階を基準に、それより下の階は、1階下がる毎に従来より、約0.25%税額が安くなり、反対に、基準階(中央階)より1階上がる毎に従来より、約0.25%税額が高くなるというものです。
※今回の見直しでは、実勢価格の差を埋めるほどの補正にはなっていないようですが、区分所有者全員による申し出があった場合には、申し出た割合による按分も可能とされています。(これも、上層階と低層階の利害が相反するので、現実的には、全員の合意形成は不可能でしょう)

この計算方法は、固定資産税、都市計画税だけでなく、不動産取得税にも適用されるようです。
ただ、これは、あくまで新築マンションの場合なので、既存のタワーマンションの各住戸については、従前の計算方式のままとなります。




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中古マンションの選び方の基本③ へつづく。












中古マンションの選び方の基本②/仙台のマンション購入コンサルタント