マンションの寿命を縮める要因・その1


今日、土木工事や大型建築物(ビルやマンション等)の構造体として、世界中で使われている「コンクリート」は、欧米ではすでに、1800年代前半から、広く使われていました。(セメント自体の歴史はかなり古く、古代の石組みの建物の目地部分に石灰モルタルが用いられていた)
一方、コンクリートの女房役「」が、欧米で建築物の構造体として、広く使われるようになったのは、コンクリートよりやや遅い1800年代中頃のことでした。

そして、現在のRC建築物の躯体は、この圧縮力に優れたコンクリートと、引張り力に優れた鉄(鉄筋・鉄骨)の補完構造体によって、理論的には、70年〜100年の耐用年数を有しているといわれています。ところが、実際のRC建築物の寿命は、種々の環境的要因や人為的要因により、大幅に短くなる場合があります。そこで、今回から何回かに分けて、RC躯体の寿命を縮める、数々の要因を探ってみます。



<コンクリートのひび割れ>

RC躯体の寿命を縮める最大の要因は、まず、何らかの原因によりコンクリートにひび割れが起き、(一般にひび幅が3ミリを超えると、雨水等が浸入しやすくなる)そこから浸入する「雨水」「結露水」などの水分や、空気中の「二酸化炭素」「大気汚染物質」等が、コンクリートの内部中性化を早めたり、鉄筋腐食を引き起こし、躯体強度を低下させる、という一連のメカニズムによるものです。つまり、コンクリートに起きるひび割れが、建物劣化の「根本的要因」ということができます。以下に、ひび割れを引き起こす主な要因についてみてみます。


【1】乾燥収縮によるひび割れ


コンクリートは、セメントペースト(重量比約セメント2:水1)と骨材(砂・砂利)[容積比で、セメントペースト3:骨材7]の混練物ですが、その生成の際、水和反応(セメントに水を加えると発熱し、水を吸収しながら、凝結・硬化しようとする)に使われない余分な水(余剰水)が、次第に蒸発(通常3〜4年で大部分が収まる、水分が抜けた部分は、空隙となる)する際、表面張力により、水和物を引き寄せる力が働きます。結果、引張り力に弱いコンクリートに、ひび割れを生じさせることになるのです。したがって、余剰水を含んだコンクリートは、大なり小なり必ず乾燥収縮が起こることになります。
特に、コンクリート単位水量190Kg/m3以上としていた、1986年9月以前着工の建物に多く見られる傾向にあります。(1986年9月に、鉄筋コンクリート工事標準仕様書(日本建築学会)が改訂され、コンクリートの単位水量を185Kg/m3以下にするようになった)
現在は、各種高性能混和剤(AE剤や減水剤等)の開発により、ワーカビリティを低下させないで、使用水量を減らす工夫がされていますが、今の技術を持ってしても、余剰水を完全に取り除くことは、できないといわれています。

※コンクリートの乾燥収縮の程度が、どれ位かの一例として、10メートル幅の梁などで、打設後6ヶ月で、6〜8ミリ程度の収縮が起きる。この場合のひび割れは、主筋と直角方向に起きる。


【2】施工不良によるひび割れ

ア)コールドジョイント

コンクリート打設作業中、打ち継ぎ部以外の部分で、打設を途中で中断(作業上やむを得ず中断する場合の中断目安時間は、コンクリートの凝結が、混練開始後2時間半位から始まるので、現場での打設開始を混練後1時間半以内とみた場合、打設開始から1時間以内となる。ただし、凝結が始まっても、打設した部分の突き固めはできる)して、しばらくしてから(凝結がある程度進行した状態で)その上にコンクリートを重ねて打つと、その部分が接着不良となり、時間経過とともに、水平方向に長く大きなひび割れを引き起こします。このコールドジョイントによる水平のひび割れは、3ミリ以下でも、大量の雨水を躯体内に浸入させる場合があるので、早急な改修が必要となります。

イ)水平打ち継ぎ部の接着不良
たとえば、吹き抜け部分以外の柱などの垂直部材は、上階の床スラブ上端で打ち継ぎますが、その際、打ち継ぎ部の天端ならしやレイタンス(セメントと骨材が沈下し、水とセメントの微粒子のみが浮かんでできた上澄みの表皮状部分)の除去が、きっちりと行なわれないで打ち継ぐと、この部分の接着不良となり、上記コールドジョイントの場合と同じような、水平方向のひび割れが起こります。

※この打ち継ぎ部分の改修工事の際、解体した打ち継ぎ部から、多量の部材屑(断熱材・木片等)や軍手・空き缶などが出てくるという事例もある。

ウ)養生不足
建基法では、コンクリートの養生の最低条件として、打ち込み中及び、打ち込み後5日間は、2度以上の温度を保ち、乾燥や震動により、凝結・硬化の妨げにならないよう養生することになっています。具体的には、打ち込み前の型枠(せき板)への散水や、打ち込み後7日間以上の散水、シート養生などにより、コンクリート面の湿潤性や温度を保つようにします。これらの管理が十分行なわれていないと、内部と表面との間の「湿度勾配」が起きたり(この場合のひびは、表面に細かいひびが点在する。暑中の高温期は、急激な表面乾燥が起きるので、散水などの養生管理が特に大事になる)また、真冬の氷点下期では、コンクリート中の水分が凍結膨張する「凍害」を引き起こし、それぞれひび割れの原因となるので、注意が必要です。

なお、その他ひび割れの要因としては、過大な過重・部材の断面不足・支保工(型枠を支える部材)の設置不良(又は、解体尚早)など、多岐にわたりますが、これらのひび割れの原因を特定するには、ひぴ割れ発生の時期、形状、溶出物、進行状況などにより、個々に類型判断することになります。







塾講義ファイル ◆ハード篇◆
  ■マンションの躯体は、一体何年もつの?
 ■マンションの寿命を縮める要因・その1
 ■マンションの寿命を縮める要因・その2
 ■マンションの劣化と改修・その1
 ■マンションの劣化と改修・その2
 ■マンションの劣化と改修・その3
 ■マンションの劣化と改修・その4
 ■マンションの劣化と改修・その5
 ■マンションの劣化と改修・その6
 ■マンションの耐震改修・その1
 ■マンションの耐震改修・その2
  ■高層マンションの耐震設計等に関する一考察
 ■マンションの安全は、足元から【地盤編】
 ■マンションの安全は、足元から【基礎編】
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 ■マンションの消防設備・詳細(1)
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 ■シックハウス規制に関する考察・その1
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 ■マンションの音環境・その1[外部騒音]
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 ■マンションの音環境・その3[隣戸騒音(2)]
 ■RC超高層マンションの変遷・その1
 ■RC超高層マンションの変遷・その2
 ■超高層マンション探訪・その1
 ■超高層マンション探訪・その2
 ■超高層マンション探訪・その3
 ■超高層マンション探訪・その4
塾講義ファイル ◆ソフト篇◆
 ■マンション訴訟の扉(1)[ペット訴訟]
 ■マンション訴訟の扉(2)[床騒音訴訟]
 ■マンション訴訟の扉(3)[駐車場訴訟]
 ■マンション訴訟の扉(4)[防音瑕疵訴訟]
 ■マンション訴訟の扉(5)[眺望瑕疵訴訟]
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 ■マンション管理費等滞納対策(1)
 ■マンション管理費等滞納対策(2) 
 ■マンション管理費等滞納対策(3) 
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  ■地震被害とマンションについての一考察
  ■大きな地震の後の建物チェック
  ■マンションの欠陥事例・その1
 ■既存マンションの結露対策リフォーム
 ■新築マンションの定期点検(バルコニー編)
  ■21世紀・現代「超高層マンション考」
 ■高層マンションのインテリアは?
 ■100年マンション・SIマンションって何?
 ■日本のマンションのルーツを探る
 ■中古マンションの価格はどうやって決まるの?
 ■マンションの緑化についての考察
 ■あこがれのフローリングにしたい
 ■マンション法(区分所有法)の要点を掴もう

 【その1】
 区分所有権/共用部分を利用する権利/
   共用部分の所有持分/敷地の所有権の持分

 【その2】
 区分所有者の団体/管理者の選任等/管理者の義務
  /管理規約の設定・変更・廃止/管理組合の集会

 【その3】
 管理組合法人/法人の理事・監事/法人理事の義務
 【その4】
  違反行為停止等の「裁判外請求」/違反行為停止等の
  「裁判による請求」/専有部分使用禁止の
  「裁判による請求」 /専有部分競売の「裁判による請求」

 【その5】
  マンションの復旧/大規模滅失時の買取請求権/
  罰則について

 【その6】
  マンションの建替え/売渡し請求権/再売渡し請求権
  /団地型マンションの建替え






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