マンションの劣化と改修・その5
マンションの屋上防水は、当初は、モルタル防水(3層塗り)や防水コンクリート(ワイヤメッシュ入り)などのコンクリート系防水仕様とされていましたが、1960年代後半(昭和41年以降)から、コンクリート系の防水に代わり、新たにより耐久性の高いアスファルトを防水層とした「露出アスファルト防水」が行なわれるようになりました。
その後、アスファルト防水は、1970年代(昭和45年以降)に入り、室内(屋上直下の部屋)の断熱性能の向上や、防水層自体の劣化防止などのニーズに応えるため改良が加えられ、断熱材の上に防水層をかぶせる工法や1970年代後半(昭和51年以降)には、防水層の上に断熱材さらにその上に、保護コンクリートをかぶせる「コンクリート押え外断熱アスファルト防水」が採用されるようになりました。
劣化と改修の第5回目の今回は、近年のほとんどのマンションの屋上平面に使用されているこの「アスファルト防水」について考察します。
<新築時の屋上アスファルト防水>
[材質による分類]
■熱工法
二百数十度の高温で融かしたアスファルトにより、ルーフィング(防水布)を3枚程度貼り重ねて防水層を作る工法で、現在でも新築マンションのアスファルト防水のほとんどが、この熱工法で行なわれています。ただ、アスファルトを融かす時に刺激性のガスが出ることから、改修工事には不向きです。
■常温工法
改質アスファルトを含浸させてある厚手のルーフィングを1〜2枚程度貼り重ねるもので、「改質アスファルトシート防水」とも言われています。また、ルーフィングの裏面をトーチで加熱して接着しますので、若干の煙は出ますが、耐久性も高く、改修工事向きの工法と言えます。ただ、コスト的には、熱工法の約50%増しと割高になります。
[接着方法による分類]
■密着工法
防水層の1層目から、溶融アスファルトを使って、コンクリート床スラブと全面接着させる工法です。この工法では、防水層とコンクリート床スラブの間に空気が浸入した場合、さらにそれが、日射熱により部分的に大きなふくれとなる場合がありますが、「脱気筒」(40〜50m2に1基)を設置すると大幅な改善がみられます。なお、密着工法の場合は、仮にふくれ部分に雨水が浸入しても、一部分で止まりますので、部分補修のみで済むという利点もあります。
■絶縁工法
これは、密着工法とは逆に、防水層の1層目に特殊なアスファルトルーフィングを使うことによって、コンクリート床スラブと接着しない(絶縁する)工法です。それにより、空気が浸入してふくれが出た場合も、ふくれが分散されるので、脱気筒の設置は不要となります。ただ、防水層とコンクリート床スラブの間に雨水が浸入した場合は、浸水が水勾配方向に広がるので、その際の補修は、密着工法より手間取ることになります。
[工法による分類]
■露出防水
屋上が非歩行仕様の場合は、防水層がそのまま露出している露出防水が採用されますが、その耐用年数は、およそ12年〜18年程度と保護コンクリート防水より短くなります。なお、露出防水は、屋上を歩行利用することが少ない大規模タイプの郊外型マンションに多くみられます。
■保護(押え)コンクリート防水
歩行可能型の保護コンクリート防水は、屋上利用頻度の高い都心型マンションマンションに多くみられる工法で、「本防水」とも言われています。耐用年数は、およそ18年〜25年程度となります。
<屋上アスファルト防水の改修>
■熱アスファルト露出防水の改修
第1回目(築12年〜18年)の改修方法としては、既存防水層を全面撤去して、新規防水層を形成する方法と、既存防水層の上に新規防水層をかぶせる方法とがあります。どちらを選択するかは、既存防水層の劣化の程度と、既存防水層の下にどれくらい(面積的に)浸水があるかにより決めることになりますが、通常耐用年数内であれば、コスト面や作業性・廃棄物の問題などから、劣化部分や浸水部分を復旧(浸水部分は、切開して乾燥させる)しての新規アスファルト防水(2層)のかぶせ工法がほとんどです。
また、第2回目(築24年〜)の改修の時には、5層の既存層を全面撤去して、新規に防水しなおすか、5層の既存層の上にさらに、絶縁工法により防水シート(合成ゴムルーフィング等)を1層かぶせ、旧防水層から立ち上がる水蒸気は、脱気筒を設けることにより逃がす方法のいずれかとなります。
なお、いずれの場合も、防水層の紫外線等による劣化を防ぎ、耐用年数の伸長を図るため、防水層の表面にシルバーコートやアクリルエマルジョンコート(2回塗り)等のトップコートを施します。
■保護コンクリート防水の改修
この場合の改修方法の選択肢も、露出防水の場合と同じで、コンクリート・防水層共に全面撤去するか、新規防水を上からかぶせるかのいずれかになります。
かぶせ工法を採用する場合には、保護コンクリートの劣化部分や浸水によるふくれ部分のやり替え(部分撤去し、防水樹脂モルタルで打ち直す)やひび割れ補修及び、伸縮目地の打ち直し(ウレタンシーリング等)を十分行なった上で、ポリマー改質アスファルトシートなどを全面に貼り付けた上から、ウレタン塗膜防水の2回塗りなどを行なうことになります。
なお、工法としては、露出防水の場合と同様の理由により、かぶせ工法が主流となっています。
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