マンションの消防設備についての考察
マンションの共用部分には、居住者でも何のためにあるのか良く分からない設備が結構ありますが、消防法令に基づく各種消防設備もその一つだと思います。これらの設備は、普段使うことはまずないし、何に使うものか分からなくても、日常生活上、特段支障をきたすこともないかもしれません。ですが消防設備は、自分や家族の生命・財産を守ってくれるとても重要な設備ですので、ここで、簡単に考察してみることにします。
まず、マンションにおける消防設備の設置基準は、消防法施行令第11条他による設置のほかに、共同住宅等の「特例基準」(消防庁通達)によるものがあります。これは、個々の独立性の強い居住形態であるマンションでは、物理的には一つの建物とはいえ、防火対象物としては、一括りの建物として扱うことが困難なため、共同住宅等のみを対象として設けられた特別の設置基準です。
この消防庁による共同住宅等の特例基準通達は、過去何度か発令されていますが、現在有効な直近の通達は、平成7年10月5日付けで発令された「220号通知」と、平成8年7月17日付けで発令された220号通知の細部補足として発令された「145号通知」の2つです。(施行は、平成8年10月1日)
特例基準が適用されるには、建物の主要構造部が、耐火構造であること、共用部分の天井壁が準不燃以上であること、住戸は、防火区画されていること、玄関ドア等は、特定防火ドア等で自動閉鎖機構付き(一戸建ての玄関ドアのようなドアストッパーは設置不可)であることなどの条件がありますが、通常、RC(鉄筋コンクリート)のマンションであれば、これらは、クリアされていると思っていいでしょう。
それでは、以下に、マンションの中でも代表的な消防設備の2つについて、220号特例基準適用の場合と、消令第11条・12条による通常の設置基準の違いをみてみます。
屋内
消火栓 |
11条による設置 |
4階以上の階が450m2(内装不燃化の場合)等は、各階に設置が必要 |
220号特例基準 |
開放廊下型マンションで、各住戸に自動火災報知設備(共同住宅用)等が設置されている場合は、設置免除 |
スプリンクラー設備 |
12条による設置 |
11階以上の各階の住戸等に設置が必要 |
220号特例基準 |
開放廊下型マンションで、住戸等の内装が、準不燃以上の場合は、11〜14階までは、設置免除(15階以上は、設置が必要)
開放廊下型で、かつ、各階2方向避難が、確保されているマンションについては、住戸等の内装が準不燃材以上の場合には、全階設置免除。 |
あなたのマンションが、もし平成8年10月1日以降建築確認のマンションで、各階に、屋内消火栓があったり、11階以上の階の住戸内に、スプリンクラーが設置されている場合は、あなたのマンションは、それら設備に関しては、220号特例基準の適用を受けていないことになります。
※一般的には、設備コストを抑えるために、220号特例基準適用型の設計がなされる場合が多い。
尚、屋内消火栓がある場合は、火災のとき居住者自身が、これを使って消火活動を行うことになりますので、管理会社のスタッフ立会いのもと、格納庫の中を開け、使用方法等を確認しておいた方がよいと思います。ちなみに、近年のマンション(昭和63年頃以降)の屋内消火栓は、2号消火栓といって、一人でも消火活動ができるように、小振りの保形ホース(長さ20メートル前後・警戒距離15メートル)が使われています。
その他、マンションで特に目に付く消防設備としては、「連結送水管」があります。これは、高層マンションでの消防隊員の消火活動を円滑にするための設備で、5階以上の建物で、延べ床6000m2以上の場合か、7階建て以上の全ての建物に設置が義務付けられています。
1階外部に、消防車の消火ホースをつなぐ送水口(ダブル)があり、3階以上の各階に50m以内ごとに放水口が設けられていますが、居住者の方が直接使う設備ではないので、用途だけを知っていれば十分だと思います。
また、消防法ではなく、建基法の規定によるものですが、15階建て以上などのマンションに「非常用エレベーター」が設置されている場合があります。これを火災時、居住者が避難用に使用するエレベーターだと勘違いしている方が、たまにいますので、少し追記します。このエレベーターは、非常用とはいっても、高層階の居住者が、避難のために上階から1階に降りるためのものではなく、消防隊員が、消火活動のために、1階から上階(火災発生階)に上がるための消防隊員専用のエレベーターですので、居住者の方は、あくまで、階段等を使って避難することになります。(なお、通常は非常エレベーターも、火災時以外は、居住者が一般利用してもよいことになってます)
備えあれば、憂いなし。万が一の時のために、あなたのマンションの消防設備もこの際、管理組合の理事など一緒に、確認してみてはいかがでしょうか。
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