超高層マンション探訪・その3
京葉線海浜幕張駅より、徒歩8分、国際的21世紀型モデル都市として、アーバンデザイン賞や、グッドデザイン賞にも選ばれた「幕張ベイタウン」の一角に、スレンダーな超高層タワーマンションがそびえ立っています。幕張海浜公園に続く、幅20メートルのけやき並木に面した、エントランスをくぐると、リゾートホテルを彷彿とさせる、吹き抜けの開放的なロビーラウンジが、眼前に広がります。
今回は、超高層の鹿島が設計施工(売主は、三井不動産・鹿島建設ほか3社)し、2003年3月竣工した「幕張パークタワー」(地下1階・地上32階・高さ約110メートル・総戸数226戸)の探訪です。
【施設概要】
幕張パークタワーは、タウン全体の明確なゾーンニングにより、大規模マンションにありがちな、店舗住居混在の複合用途型とはせず、居住者のためだけの、クオリティーの高い居住性を追求しています。(ショッピングゾーンは、北隣に大型商業施設「幕張ベイタウンプラザ」がある)
まず、2層吹き抜けの大空間を誇るロビーラウンジに隣接して、キッズパラダイスと名づけられたキッズスペースとラウンジライブラリーがあります。また、低層階の居住者や来訪者に、タワー上階から望む魅力的な眺望を満喫してもらう(東京湾を眼下に一望でき、富士山も遠望できる)ために、13階と23階の中層階には、ゲストルーム。最上階の32階には、2層吹き抜けのスカイビューラウンジが設けられています。
【架構形式】
建物平面形状は、一辺が30メートルの正方形で、H型のスーパーウォール(高強度コア壁)を建物中心部分に配置した「センターコア架構」としています。また、この一階から最上階まで縦に連続して構築されたスーパーウォールとその頂上部(屋上部分)に水平に配されたスーパービーム(梁せい4000ミリの高強度梁)さらに、その梁の端下部に接続するオイルダンパー(この場合は、上下の挙動追従性をもつ制震装置)・コネクティング柱(一階から最上階まで連続した柱で、ダンパー部に連結されたもの)の組み合わせによる「スーパーRCフレーム構法」の採用により、RCコア壁構法の弱点である地震などの水平過重に対する過大な応答変形を制御しています。
※スーパーRCフレーム構法の挙動メカニズム
建物に地震などの水平方向の大きな外力が加わると、8ヶ所32機のオイルダンパーの伸縮により、その上に井桁状に配されたスーパービームの端部が上下挙動し、それによって、建物全体の変位(水平方向の揺れ幅)を減衰させると同時に、コア壁が負担する水平過重を低減させる。
[イメージとしては、一本の軸棒の上にバランスしたやじろべえの端部が、上下に揺れるイメージ。やじろべえ部分が、スーパービームに当たり、軸棒部分がスーパーウォールに相当する]
【骨 組】
スーパーRCフレーム構法の採用により、梁内臓型(一部長尺梁には、アンボンドPC鋼線[グリース等の防錆材注入型PC鋼線]を用いたプレストレストコンクリートを使用)の厚さ300ミリのフラットスラブ化や、スラブを支えるサポート柱(基準階で、900ミリ角)位置のフレキシビリティー、また、階高も、1階で4.80m、14〜26階が3.10m、27〜32階が3.50mという高階高を確保し、水平方向にも、高さ方向にも制約の少ない大空間フレームを実現しています。
【部材強度】
耐震構造躯体であるコア壁(部材厚1000〜1800ミリ)は、1階から6階までが、Fc60N/mm2の超高強度コンクリートと降伏点強度685N/mm2の超高強度鉄筋を使用し、それより上層階のコンクリートは、最上階層(48N/mm2)を除き、6〜8階おき毎に6N/mm2刻みで、Fc(設計基準強度)を低く設定しています。また、コア壁のH型部分の端部と交差部の内部に、円形の柱型配筋をすることによって、コア壁に水平挙動に対する靭性(ねばり)を付加しています。
※なお、柱の現場プレキャスト。梁・バルコニー・外壁等の工場プレキャスト(ただし、床スラブは、梁内臓型で、配筋が複雑なため、全面現場打ち)や、コア壁配筋の地組みなどにより、1フロア当たりの実働施工日数6日という短工期を可能としています。
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