マンションの緑化についての考察
マンションにおける緑化は、都市生活での昨今のガーデニングブームや、環境問題あるいは、マンションの景観価値に対する意識の高まりなどから、都市圏を中心に、積極的に取り入れられています。
コンクリートに囲まれたマンションで、目に触れる緑を増やす、花を含めて香りを楽しむあるいは、共同花壇などで、住民同士が一緒に土いじりをするなどの体験は、今後ますます高齢化するマンション居住者にとっての「癒し効果」や「健康回復効果」(最近は、日本でもホーティセラピー[園芸療法]なども注目されている)としても期待されています。
また、国土交通省では、都市部の緑化を進めるため、大規模ビルを建設する際には、緑化区域の設置を義務付け、都市環境の改善を図るよう法制化する方針を打ち出しています。
東京都においても、2000年4月から、都の「自然保護・回復条例の施行規則が改正され、建物外敷地面積の20%以上の緑化に加え、人の出入りのできる屋上では、利用可能面積の20%以上を緑化するよう指導されています。
そこで、今回のテーマは、「マンションの緑化」です。
<建物周辺の緑化>
建物周囲(特に、バルコニー側)の植栽は、低層階のプライバシー確保や夏季の日除け目的などから、多くのマンションで取り入れていますが、長期的には、意外にトラブルもあるので、以下の点に留意し、慎重に樹種を選定する必要があります。
【1】 ケヤキなどの高さのあまり大きくなる樹種は避ける
落葉樹でも、10メートルを超えるような高木に成長すると、1〜3階などでは、5月以降になると、日中でも部屋が暗い、洗濯物の乾きが悪いなどの日照障害となる場合があったり、低木や芝などの周辺植物の成長不良を招く場合がある。また、築20年以上のマンションでは、樹木の毛細根が、舗装路を持ち上げたり、汚水管や桝などに侵入して、汚水が漏れ出す事故等もある。
【2】 サクラなどの虫の付きやすい花木は、できるだけ避ける
花木の場合は、特に毛虫などの付きやすい樹種もあるので、植えるときは、できるだけ建物から離す。また、葉が茂りすぎると、スズメバチの巣などができやすくなるので、定期的な管理が必要。
<屋上の緑化>
首都圏を中心に、気温が周辺の郊外に比べて高くなる「ヒートアイランド現象」が、年々深刻化しています。都心部のアスファルトやコンクリート等からの蓄熱放射とCO2増加による「温室現象」が主な原因であるといわれています。特に、RC建物の場合、陸屋根とする場合が多いので、真夏には、傾斜屋根の他の建物より日射角が大きく(夏至南中で、約78度)なり、表面温度は、70度以上にも熱せられます。
都市部に相当数あるこれらマンションなどのRC建物(陸屋根の場合)で、屋上緑化が促進されれば、かなりの温暖化抑止効果があると考えられています。
以下に、屋上緑化のための基本事項をまとめてみます。
【1】 土壌種類の選定
一般の植栽用の土壌は、水分を含むと相当の重量となるため、各建物ごとの積載荷重の制限により、パーライト・ピートモス等を混合した改良土や人工軽量土などを比較選定する。
【2】 植物の選定
植物の大きさにより、生育に必要な「土壌厚」があるので、植物選定の際には、上記荷重負担の制限との兼ね合いから、限度土壌厚を算定し、それに見合った植物の大きさを選定する。 (ex.潅水なしで、、土壌厚50センチで3メートルまでの植物)
【3】 排水の確保
屋上植栽などの工作物内の植栽の場合は、必要土壌厚による養分や水分の確保と同時に、水捌け確保のための「排水層厚」(パーライト等の岩石焼成加工物を用いる)も大切となる。 (ex.土壌厚50センチの場合は、その内の排水層厚は15センチ)
なお、今後の屋上緑化の抱える問題点としては、強風等による乾燥・倒伏、排気筒からの暖気の影響、養分や水分の補給方法などがあげられますが、自動潅水装置や土中貯水装置などの屋上緑化関連製品の開発も進んでいますので、近い将来、屋上緑化が、より促進されると思われます。
|
|