十数年前の分譲マンションの居室(台所以外)の床仕上げ材は、階下への衝撃音伝播(当時は床スラブ厚が現在よりかなり薄い)の関係から、フェルトグリッパー工法によるタフテッドカーペット(ループパイル地)貼りが主流でした。
しかし、その後のカーペットのクリーニング面(家庭では洗浄できない)の問題や、それに伴う衛生面(ノミダニやハウスダスト)の問題により、次第にマンションの床材もフローリング材へと主流が移行してきました。
当然、新築分譲時から、フローリニグ材使用を前提として設計されたマンションにおいては、十分な床スラブ厚の確保(200ミリ前後)等により、階下への衝撃音の問題は、ほぼクリアされているので大丈夫なのですが、問題は、築十数年以上の居住者が、フローリングブームに乗って、カーペットからフローリングにリフォームしたケースです。そもそも、フローリングを前提とした設計になっていないのですから、階下からの騒音苦情は、かなりの数に上りました。訴訟にまで発展した、ドラスティックな対峙事例もありました。
これらを受け、平成9年の標準管理規約の改正時には、フローリング等のリフォームは、管理組合の事前承認を受けなければできない旨の条項が追加され、各管理組合の現管理規約をこの新・標準管理規約の内容に速やかに改定するよう、指導的コメントが出されたほどです。
その後、これらの経緯から、マンションによっては、トラブルの火種になるフローリング工事を全面的に禁止するところや、きびしい仕様基準を設けたり、専門家の事前調査を経て、仕様が一定レベルをクリアしていなければ承認しない、というところも出てきました。
ですが、やはり、あこがれのフローリニグに変えたいという方はかなりいらっしゃると思いますので、ここでは、面倒な手順を踏んででも、どうしてもフローリングにしたいという方のために、床スラブがさほど厚くなくとも、階下からの音苦情の極力起きない工法や施工手法を検証してみることとします。
では、まず、主なフローリング工事の工法を見てみます。
【1】直床工法
【2】根太床工法
【3】置き床(乾式二重床)工法
【4】浮き床(湿式)工法
【1】の工法は、床スラブが薄いので、採用不可です。【2】の工法は、下地の根太が、階下へのサウンドブリッジとなるので、たとえ、床スラブが厚くても採用は不可です。【3】の工法は、現在でも最もポピュラーな工法ですが、唯一遮音性で問題なのが、「際根太」(壁際の木下地)の使用です。もし、置き床工法を採用される場合は、できれば、際根太なしの製品をオーダーし、さらに、床材と巾木を接触させないようにして、その隙間部分がエア抜きになるように施工してもらえば、遮音性は、かなり確保できると思います。
*ただし、際根太なしの場合は、壁際に重い家具を置くと、床が沈みこむ場合があります。
【4】の工法は、遮音性(断熱性も高い)においては、最も効果の高い工法ですが、工費がそれなりにかさむのと、より高い施工精度が要求されます。
この工法は、簡単に説明しますと、既存カーペットを全て撤去した後、壁内装材の下部10センチ程度(床仕上げ面の高さまで)を切り取り、床スラブの上にポリエチレンフィルム等を敷き、その上にロックウール(又は、グラスウール)を、壁際まで均一に敷きます。(壁際のみウールの上にポリフィルムを回す) *床スラブ厚150ミリでL45の遮音レベルを確保したいなら、ウール50ミリ(但し、建具等とのレベル調整が必要)
更に、それをラスモルタル(金網入り)で押さえ、その上に、床仕上げ材を壁材に接触しないように貼ります。(床面の平面性によっては、仕上げ貼り前に、セルフレベルを流す)
最後に、巾木を着けますが、巾木も、仕上げ材と接触しないように注意します。その隙間は、弾性目地材等で埋めます。
また、フローリング材は、スラブ厚や工法等と、求められる遮音性能によりますが、L45場合によっては、L40(40になると歩行感は、かなり柔らかいので、ご自分で確認してからの方がいいと思います)の遮音等級のものが必要になると思います。
なお、フローリング表面のキズやひび割れを気にする方や、ダイニング等でキャスターイスを使用する場合は、少々高くても、クラックレス製品や耐キャスター性の製品をオーダーすることをお勧めします。
いずれにしても、このような施工精度を要求されるリフォームの場合は、工法・部材選択と同じ位、施工業者選びが大事ですので、マンションフローリングリフォームの実績のある確かな業者に依頼して下さい。