マンションの劣化と改修・その2
RCマンションも、第2回目の大規模修繕工事(築20年前後)が計画されるころになると、建物躯体本体(鉄筋コンクリート)の劣化も、部位によっては、かなり進んでいる場合があるので、工事前に行なわれる建物診断時には、部位別のコア抜き呈色反応検査(検査部位にフェノールフタレインを噴霧し、赤変する部分はアルカリ性が維持されている)などにより、躯体コンクリートの中性化状況も併せて調べる必要があります。
コンクリートの中性化は、それ自体でコンクリートの強度や耐久性を低下させることはありませんが、コンクリートのアルカリ分により保護されている鉄筋が錆び始め、コンクリートへの付着力を低下させたり、錆から腐食に移行し、鉄筋断面の欠損が起きることによって、結果的に躯体強度の著しい低下にもつながります。
そこで、「劣化と改修」の第2回目は、「コンクリートの中性化抑止策・改善策」について考察します。
【中性化の進行】
RC建物の中性化の進行程度は、個々の建物毎の環境や、打設されたコンクリートの質、仕上げ面の材質さらに、一つの建物内においても、その部位によって随分と違ってきます。
一般に以下の部位やコンクリートなどは、その他の部位や普通コンクリートより進行が遅くなります。
@基礎等の地中にあり、常に湿潤状態にある部位
A工場などで生成された、良質で均一なコンクリート(プレキャストコンクリート)
B圧縮力を受けて、ひび割れの発生しにくいコンクリート(プレストレストコンクリート)
Cコンクリートの密度の高い[セメント比率が多く、比重が重い]コンクリート(高強度コンクリート)
【中性化抑止策】
1)[仕上げ材による抑止]
コンクリートを保護する仕上げ材別では、以下の順で、中性化抑止効果が高くなります。これは、つまりは、中性化の原因となる二酸化炭素の浸透性(浸湿性)の高い仕上げ材ほど、中性化抑止効果が低いことを意味しています。
@ビニールクロス貼り(内壁面)
Aセメントモルタル塗布(共用廊下の床・バルコニー床)
B複層弾性塗料塗布(外壁面)
Cアクリル系エマルジョン塗料吹き付け(外壁面)
Dエポキシ系エマネジョン塗料吹き付け(外壁面)
Eアクリルリシン吹き付け(共用廊下壁面・バルコニー揚げ裏)
※外壁が陶磁器タイル貼りの場合は、下地にモルタルを塗るので、Aに該当します。
※リシン吹き付けは、かつて建物外壁に多く用いられた仕上げ工法で、塗料と砂を混合したものです。
2)[外断熱工法による抑止]
最近は、外壁面内部の結露の問題などから、外断熱工法の利点がクローズアップされていますが、断熱性能の十分でない既存マンションにおいても、室内結露対策のために外壁面への外断熱工事(断熱材を貼り、上から外壁パネルで押さえる)が行なわれるようになりました。これにより、断熱効果以外の二次的効果として、外壁躯体の中性化抑止効果が期待されます。
【中性化改善策】
1)[アルカリ性を付与する]
この工法は、既存の仕上げ材を除去した後、コンクリート面に直接アルカリ水溶液を塗布・含浸させるもので、薬剤としては、「特殊けい酸アルカリ水溶液」などが使われています。
2)[電気化学的再アルカリ化]
これは、コンクリートの外部面に、特殊アルカリ溶液を染み込ませた溶液保持材(内部に電極入り)を貼り付け、コンクリートの外部面を(+)の電極、内部側を(−)の電極とし、直流電流を流すことによって、コンクリートの微細な隙間から、アルカリ成分を電気的に染み込ませるもので、現在、再アルカリ化を図る方法としては、最も効果的工法の一つです。
以上、コンクリート躯体の中性化抑止等について見てきましたが、築20年を超える高経年マンションでは、予算的な面から必要な大規模修繕工事が見送られていたり、建物の劣化診断を行なわずに、対処療法的に、部分修繕を繰り返しているケースもありますので、上記中性化対策等がより有効的に作用するためには、「劣化の現状」を早期に把握することが、最優先であるといえます。
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