マンションの劣化と改修・その4


昭和50年ごろ以降、コンクリートの型枠に「合板」が使われるようになると、打ち上がったコンクリートの平滑性も格段に向上するようになり、それまで、コンクリート表面の不陸調整のために塗られていたモルタル下地塗りも、激減するようになりました。それと同時に、この頃のほとんどのRC建物のモルタル下地の仕上げ塗りとされていたリシン吹き付けも姿を消し、それに変わって、コンクリート素地に直接塗料をローラーやスプレーガンで塗布する工法が普及するようになりました。
今回は、前回の近年のRC建物に多い「タイル仕上げ」の外壁修繕に続いて、それ以前のRC建物の外壁仕上げの主流であった「塗装仕上げ」の場合の外壁修繕を考察します。


<外壁塗装の修繕工事>

外壁面が塗装仕上げの場合の第1回目の修繕工事は、タイル仕上げの場合とほぼ同じ時期の築後10〜12年頃が適期となります。
まず、修繕工事に先立ち、既存塗料の仕様確認と、既存塗料仕上げ面の付着強度の検査を行ないます。通常、旧塗膜に5〜7Kg/cm2の付着強度があれば、重ね塗りが可能となりますが、ただ、この重ね塗りの場合は、下地調整(塗料のケレン[はがし]や樹脂モルタルしごき[凹みや気泡つぶし]等)の施工精度によっては、新規塗膜の早期剥離などのトラブルが多いので注意が必要です。

【塗料の分類】

最も一般的な「複層弾性塗料」の塗り替えの場合、コンクリートの耐候性と塗料の付着をよくするために塗られる下塗り材シーラー又はフィラーと、その上に塗る主材及び、最終仕上げ材のトップコートの3種の塗膜層からなります。以下は、その3種3層の内、主材とトップコートの主な分類構成です。なお、実際の施工時においては、現況判断から、適宜これらを組み合わせて使用することとなります。

《主材》
@溶剤タイプ(シンナーで薄めるもの)        
■有機系樹脂で皮膜をつくるもの/つやあり/防水性高い/通気性低い
   ★弾性系(ゴム成分のもの)   ★非弾性系(硬質のもの)
■無機系セメントやセラミックを主成分としたもの/つやなし/防水性低い/通気性高い
   ★弾性系              ★非弾性系
A水性タイプ(上記溶剤タイプと全く同じ系統がラインナップされている)

《トップコート》
@溶剤タイプ
■有機系     ■無機系
A水性タイプ
■有機系     ■無機系

樹脂分類 アクリル ウレタン シリコン  フッソ
耐用年数  6〜7 8〜10 13〜14 15〜20
           グレード低い                      グレード高い

水性系 1液性・溶剤系 液性・溶剤系 液性・溶剤系
 グレード 低い                              グレード高い



【施工手順の一例(複層弾性塗装の場合)】


@下地調整
これは、先にも述べたように、塗り替え施工の良否を左右する大事な工程となりますので、平滑度検査などを十分に行なうと同時に、一部の外壁部分でテスト施工をするなどして、慎重に進める必要があります。まず、旧塗膜のケレン後、120kg/m2程度の高圧洗浄で、付着力の低い塗膜と一緒に洗い流します。凹み部は、樹脂モルタル塗り、ひび割れがある場合は、Uカットウレタンシール等で補修し、さらにその上から接着性のよい「カチオン系」の樹脂モルタルでしごき塗りをします。この場合の膜圧は、1.5〜2.0ミリを確保する必要があります。

※旧塗膜が有機系の場合のケレンは、剥離剤などの使用と併用したケレンが可能となりますが、無機系の場合は、ワイヤブラシやサンダーなどの物理的ケレンのみとなりますので、大量の粉塵と騒音を伴うことになります。

Aシーラー又は、フィラー塗り(下塗り)
最近は、ケレン後の素地に、シーリング補修対象外のヘアークラックが多い場合は、クラック追従性のある微弾性フィラーを使うようになりました。(下地との接着性も考慮する場合は、接着力の強い溶剤系シーラーと微弾性フィラーの重ね塗り)また、この下地塗りは、塗りむらが出ると、その部分の主材の剥離に繋がりますので、食い付きのよいウールローラーや細部は小刷毛なども使い、目地部分も含めて全面に均一に塗布します。

B主材塗り(中塗り・上塗りの2回塗り)
塗料メーカーの推奨する新商品や、フッソ系のハイグレード塗料の中には、謳い文句通りの性能(耐久性・非褪色性等)が得られないものも、未だありますので、費用対効果も考慮すると、施工実績が長く(15年以上)、10年保証2液性溶剤タイプアクリル系または、ウレタン系弾性塗料などを使う方が賢明だと思われます。また、主材塗りは、乾燥後の必要塗膜厚(一般に弾性塗料の塗膜厚は1.0ミリ)を確保してから、模様付けに移らなくてはなりませんので、平塗り2回塗り(吹き付け)後、24時間以上乾燥させた後、「膜厚測定器」を使って、塗膜厚不足の箇所がないかを確認します。

Cトップコート塗り(仕上げ塗り)
トップコートは、主材を紫外線やその他汚染から保護(弾性塗料の場合は、ゴム弾性の劣化防止にもなる)するために塗られます。一般には、10年程度の耐久実績のある溶剤タイプのアクリル系又は、ウレタン系などのエナメル塗料の2回塗りが多いようです。


なお、第1回目の外壁塗装改修工事が、良質な弾性塗料を使用して、下地施工ともに良好な場合は、第2回目(10〜12年後)の外壁改修時においても、弾性塗料のゴム弾性低下率20%以下が確保されている場合が多いので、この場合には、トップコートのみの塗り替えだけでも十分となります。







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