超高層マンション探訪・その4


今回の超高層マンション探訪は、埼玉県さいたま市に、三井建設設計施工により、平成12年11月に完成した「パークシティ大宮セントラルタワー」です。
敷地内には、33階建てのセントラルタワー(B棟)を中心に、左右に14階建て(セットバック形)のA棟と、13階建て(セットバック形)のC棟が、露払いのように立ち並び、さらに、3階建ての自走式駐車場・管理棟という、一大団地型マンション群を形成しています。

現在では、33階という高さを聞いてもさほど驚きを感じなくなっていますが、高層棟2棟に挟まれたことによって、33階という階数以上に高く堂々とそびえ立って見えます。
また、このセントラルタワーで特に目を引くのは、33階建て(高さ約107メートル)という超高層でありながら、平面形状を整形とはせず、あえて特殊な正方形L字型形状としていることです。
それでは、早速、このL字型形状の超高層マンションの秘密(ハード面)をのぞいてみましょう。


【構造概要】

平面形状を一辺が30メートルの正方形L字型としたことによる最大のメリットは、L字の内側部分に当たる各住戸に面する共用廊下を「外部開放型」とできるため、消防法により高層階に設置が義務づけられている、スプリンクラー設置が免除されることにあります。

※スプリンクラー設置は、消防法の規定により、原則11階以上の建物に義務づけられていますが、耐火構造の集合住宅に限り、共用廊下が外部開放廊下型で、2方向避難が確保され、さらに内装制限(11階以上の住戸・共用室等の天井・壁が準不燃材以上)をクリアしている場合は、集合住宅220号特例基準により、11階以上の建物でも設置が免除される。

ただし、L字型形状の超高層は、地震や強風などの外力に対して、不安定となる(偏心率等が増大)ため、L字部分の端部同士を立面形状で層1節の10個の鉄骨スーパーブレース(X形の高強度筋交い)で繋ぎ、建物全体の剛性バランスを確保しています。
また、幅12メートル四方の無梁空間(フラットスラブ)を1フロア当たり3面設けたことによる耐力補強(同時に、建物に加わる水平過重自体を減衰)として、降伏点強度100N/mm2級の低降伏点鋼(変形能力の高い鋼材で、過重エネルギー吸収能力が高い)を用いた「制震壁」を戸境壁内に、1〜23階までは、1フロア左右対称に4枚、24階から30階までは、2枚配置しています。
また、この制震壁は、戸境壁内に設けられていることから、レベル1程度(震度5強、水平加速度80〜100ガル程度)の大地震後もメンテナンスフリーとしています。


【部材強度/基礎工法】


1階から5階までの低層階の柱は、Fc60N/mm2の超高強度コンクリートと、直径41ミリで降伏点強度490N/mm2の超強度異形鉄筋(主筋)を使用しています。
また、基礎杭は、杭径2200ミリのFc27N/mm2現場打ちRC拡低杭(過重負担の大きい建物外周部の杭のみ[杭頭部鋼管巻き]とし強度補強)を採用し、地下およそ42メートルの支持層(砂礫層)まで打ち込んでいます。


【プレキャスト施工概要】

セントラルタワーは、十分な広さの敷地確保が可能であったため、以下の内容のプレキャスト部材(PCa)の全部を現場敷地内製作としています。

    柱      梁  住戸内床スラブ  外部床スラブ
  PCa形式  フル
 プレキャスト
 ハーフ
 プレキャスト
 ハーフ
 プレキャスト
 フル
 プレキャスト
 1フロア当りの
 必要部材数
 31ピース  23ピース  26ピース  24ピース
 主な部材寸法
(センチ)
断面75角〜
110角
断面57×75〜
70×95
 厚さ6.5  厚さ23.0

なお、上記1フロア分のPCa必要部材は日で製作し、2フロア分の部材を常時ストックすることによって、1フロア当りの実働施工日数を、日サイクルとしています。



※建築分野では、一般的に圧縮強度が36N/mm2(360kg/cm2)を超えるものを「高強度コンクリート」。60N/mm2 (600kg/cm2 )を超えるものを、「超高強度コンクリート」と呼んでいます。

Fcとは、コンクリートの設計基準強度[材齢28日後の圧縮強度]を指します。上記の圧縮強度が36N/mm2は、設計段階でFc36と置き換えられます。(鉄筋の引っ張り強度を示す「SD」は、Steel Deformed Barの略で、降伏点強度[引っ張られた鉄筋が元に戻らなくなる点]を示します。SD390の鉄筋の場合、390N/mm2が、降伏点強度であることを示しています)

※プレキャスト部材とは、工場や施工現場の余剰スペース等で、事前にあらかじめ造られた部材全般(主に、鉄筋コンクリート部材)を指します。







塾講義ファイル ◆ハード篇◆
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塾講義ファイル ◆ソフト篇◆
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 ■マンション訴訟の扉(4)[防音瑕疵訴訟]
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  ■大きな地震の後の建物チェック
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 ■新築マンションの定期点検(バルコニー編)
  ■21世紀・現代「超高層マンション考」
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 ■100年マンション・SIマンションって何?
 ■日本のマンションのルーツを探る
 ■中古マンションの価格はどうやって決まるの?
 ■マンションの緑化についての考察
 ■あこがれのフローリングにしたい
 ■マンション法(区分所有法)の要点を掴もう

 【その1】
 区分所有権/共用部分を利用する権利/
   共用部分の所有持分/敷地の所有権の持分

 【その2】
 区分所有者の団体/管理者の選任等/管理者の義務
  /管理規約の設定・変更・廃止/管理組合の集会

 【その3】
 管理組合法人/法人の理事・監事/法人理事の義務
 【その4】
  違反行為停止等の「裁判外請求」/違反行為停止等の
  「裁判による請求」/専有部分使用禁止の
  「裁判による請求」 /専有部分競売の「裁判による請求」

 【その5】
  マンションの復旧/大規模滅失時の買取請求権/
  罰則について

 【その6】
  マンションの建替え/売渡し請求権/再売渡し請求権
  /団地型マンションの建替え






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