独身時代、親元で一戸建て暮らししかしたことのない人が、結婚して新居を構え、気密性の高いRCマンションに引っ越すといままでの冬の寒さが嘘のように、部屋の中が暖かいのに驚かされるものです。コンクリートは、木材に比べて熱伝導率が高い(木材の約10倍)のですが、それは、石やレンガなどと同じように、蓄熱性が高く、一度暖まると冷めにくい材質だからです。
特に、「中住戸」では、上下左右を隣戸に囲まれているので、その四方の生活熱で、より暖かい環境となります。しかし、RCマンションでは、立地条件や間取り・断熱仕様等により、その暖かさと引き換え?に、一戸建て暮らしの時は、さほど気に留めていなかった「結露」に悩まされる場合があります。
角住戸・最下階住戸・最上階住戸・北側の居室等は、結露被害が特にひどく、結露によりカビの繁殖を助長し、壁クロス・押入れ納戸の衣類や寝具の汚損、はたまた衛生面等、快適な生活を長期にわたって脅かします。
通常、RC建物竣工後7〜8年(特に3年は、より顕著)は、コンクリートそのものが、余剰水分を放出するので、その間は、特に要注意です。一度結露付き?マンションに住むと、もうこの解決手段は、居住者の個人的レベルでは、どうにもならなくなります。
そこで、ここでは、結露対策の抜本的手段として、築7〜8年から15〜6年程度のマンションを前提とした「結露対策リフォーム」について、あらゆる角度から考察してみます。
理論上の結露抑制の基本は、
【1】室内の各部位に低温部分を作らない(部位表面を露点温度以上に保つ)
【2】室内の湿度を上げない(相対湿度が100%を超えると余分な水分が結露する)という2つの条件に尽きます。
【1】のための具体的な工事方法としては、
《ア》壁面・天井面断熱工事
A)内断熱工法(ex.フォームポリスチレンボード等の室内天井・壁裏打ち)
B)外断熱工法(ex.外壁面への発泡ウレタン吹付け・押出発泡ポリスチレンのピンネット押え、屋上床面への断熱ブロック等の敷設)
《イ》開口部断熱工事
A)玄関ドアの改修(ex.断熱フラッシュドアへの取替え・エアタイトゴムの取り付け)
B)窓部の改修(ex.ペアガラス化・インナー樹脂サッシによる二重サッシ化)
《ウ》その他工事
A)北側壁面や外壁面に接している収納スペースを内壁側に位置を変える。
【2】のための具体的な工事方法としては、
A)換気設備の追加(ex.北側居室への換気設備の新設)
B)間取りの変更(ex.南北の部屋の間仕切り壁を取って通し部屋にする)
C)内装材の変更(ex.調湿効果のある床面:コルクタイル、壁天井面:紙クロス・珪藻土クロスへの変更)
*但し、コンクリート直貼りの場合は、コンクリートの中性化抑制の上では、通気性素材は、マイナス
D)室内建具の変更(ex.各部屋入口ドアを開け放ちの利く引き戸への変更・クローゼットの扉を引き戸に変更)
その他、工事以外の対処療法的結露対策としては、
※水回りは、常時負圧を保つ(換気扇を常時ONにしておく)
※同時給排気型換気扇がある場合で、屋外湿度が低い時は、それをON、屋外湿度が高い時はそれをOFFにして排気専用の換気扇のみON
※局所暖房を止めて、室内温度が均一になる床暖房等に変える
※背の高い家具を止める
※入浴後は、浴室床の水をスクイジー等でかいでおく
※トイレの蓋は、使用後は、常時閉めておく
以上、いろいろと結露対策について考察してきましたが、ひとつでも、あなたのお宅の結露対策のヒントになれば幸甚です。
尚、上記リフォーム工事実施にあたっては、入居者個人ではできないもの(管理組合でやるべきもの)や、管理組合の承認・届出が必要なものもあるので、詳細は、管理規約を読むか、管理組合に確認して下さい。
※平成15年7月1日以降着工のマンションでは、24時間換気システムが装備されていますので、特に、新築入居後2年程度は、結露対策のみらなず、ホルムアルデヒド等のシックハウス対策の上からも、夜間や冬季でもスイッチを切らず、常時(24時間)換気システムを稼動させることをおすすめいたします。この際、各居室の換気レジスター(換気調整口)を全閉にしていると、換気効果が得られませんので、冬季でもかならず、「半開」以上にしてください。