マンション法(区分法)では、マンションは、複数の共有者が、一つの建物内で共同生活を営んでいるので、建物の保存に有害な行為や他の共有者に迷惑の掛かる行為(共同の利益に反する行為)をしてはいけないと明記しています。民法では、共有者が共同利益背反行為をした場合には、他の共有者は、不法行為による損害賠償の請求などができることになっていますが、これだけでは、違反行為自体の除去や、違反行為の予防はできないので、区分法では、他の共有者保護のために、義務違反者に対する措置として、以下のような特別な措置を定めています。
■違反行為停止等の「裁判外請求」
各区分所有者は、一人でも数人でも、違反者に対して、裁判外で以下のことが請求できる。
@違反行為の停止(例えば、管理規約禁止行為のピアノの演奏停止等)
A違反行為から生じた結果の除去(例えば、共用部分に不当に設置したものの撤去等)
B違反行為を予防するための措置(例えば、騒音予防のための装置[防音装置等]の設置等)
※上記@〜B共、違反するおそれがある場合にも、請求することができる。
■違反行為停止等の「裁判による請求」
違反者又は、違反するおそれのある者が、裁判外の請求に応じない場合には、総会で過半数(区分所有者の頭数・共用持分等)の賛成により、上記@〜Bを裁判所に請求することができる。
※裁判の原告には、組合が法人の場合には、法人。組合が非法人の場合には、区分所有者全員の共同原告又は、総会の過半数により指名された管理者・区分所有者がなることができる。
※裁判で原告が勝訴判決を得た場合で、違反者がなお、その判決に従わない場合には、勝訴判決に基づいて(勝訴判決を債務名義として、執行文を請求)、裁判所に新たに、強制執行(代替執行や間接執行等)を申し立てることができる。
■専有部分使用禁止の「裁判による請求」
違反行為の停止等請求だけでは不十分な場合には、総会の4分の3以上(区分所有者の頭数・共用持分等)の賛成により、義務違反者の専有部分の相当期間の使用禁止を、裁判により請求することができる。ただし、口頭弁論終結時まで、以下の3つの状態が存続していることが必要である。
@共同の利益に反する行為をしている(又は、そのおそれがある)
A違反行為により、共同生活上の障害が著しい。
B違反行為の停止請求だけでは、その障害が除去できない。
※裁判提起の総会の決議の前に、違反者に弁明の機会を与えなければない(ただし、総会の場で行なう必要はない)
※勝訴判決が出されると、違反者は本人だけでなく、家族や使用人もその専有部分を使用できなくなる(ただし、第三者に賃貸することはできる)
※勝訴判決が出されてもなお、違反者がその判決に従わない場合には、勝訴判決に基づいて(勝訴判決を債務名義として、執行文を請求)、裁判所に新たに、強制執行(代替執行や間接執行等)を申し立てることができる。
※義務違反者が、区分所有者本人ではなく、賃借人の場合には、使用禁止請求に代えて、上記と同一の3つの条件のもと、「専有部分の引渡し請求」を裁判により行なうことができる。
■専有部分競売の「裁判による請求」
専有部分の使用禁止だけでは、不十分な場合には、総会の4分の3以上(区分所有者の頭数・共用持分等)の賛成により、専有部分の競売を裁判により請求することができる。
ただし、口頭弁論終結時まで、以下の3つの状態が存続していることが必要である。
@共同の利益に反する行為をしている(又は、そのおそれがある)
A違反行為により、共同生活上の障害が著しい。
B専有部分の使用禁止だけでは、その障害が除去できない。
※裁判提起の総会の決議の前に、違反者に弁明の機会を与えなければない(ただし、総会の場で行なう必要はない)
※勝訴判決を得た場合には、6ヶ月以内に新たに競売の申し立てをしなければない。
※義務違反者は、敗訴判決が出された後でも、専有部分を譲渡することができる(この場合競売請求はできなくなる)