マンションの寿命を縮める要因・その2
昭和61年に、旧建設省住宅局建築指導課長名で出された通達の中に、「コンクリート中に使用する骨材(砂利や砂)」に関するものがあります。この骨材に関する通達は、昭和52年に、コンクリートの骨材に「未洗浄海砂」が大量に出回った時期に出された通達以来2度目のことですが、今度は、アルカリ骨材反応の原因となる「砕石」「砕砂」が使われたことに起因する通達です。
これらはいずれも、高度経済成長期の建築ラッシュにより、川砂利や川砂が不足したのが、主な原因です。しかし、いくらこれら良質な骨材が枯渇したからといって、建物の耐久性に大きく関わる原材料という部分で、手を抜かれたのでは、それを知らずに終の住まいとして買い求めた消費者にとっては、たまったものではありません。
そこで、今回は、不良原材料により引き起こされる、建物劣化について考察します。
【アルカリ骨材反応】
これは、一部の砕石や砕砂に含まれる鉱物が、セメントのアルカリ性(通常PH12.5程度の強アルカリ)と反応して、コンクリートが異常膨張を引き起こすもので、たとえば、梁部分などにこの現象が起きると、長辺方向のコンクリートの膨張が鉄筋により拘束されるため、その反作用として、コンクリートが圧縮され、それによりさらに、その直角方向(短辺方向)に引張り力がはたらき、梁の長辺方向に大きなひび割れを引き起こすことになります。建物基礎部分などでも、同様のメカニズムで、水平方向の大きなひび割れが生ずることがあります。
また、このアルカリ骨材反応は、やっかいなことに、築浅時期には発生せず、築後10年弱から20年という長期間経過後に、発生するという特徴があります。
ただし、このアルカリ骨材反応は、近年建築されたマンション等には、ほとんど見られなく、もっぱら、昭和40年代後半から、昭和60年代前半に作られたRC建物に集中しています。
なお、おくまで、異常反応を引き起こす一部の砕石や砕砂だけが問題なので、アルカリ骨材反応に無害と判定された砕石や砕砂(現在使われているものとしては、石灰石・珪石・硬質砂岩など)は、まったく問題ありません。
【海砂等による塩害】
コンクリートの骨材に、未洗浄海砂などの塩分を多量に含んだものが使われると、コンクリートの中性化(コンクリート中のアルカリ成分が、空気中の炭酸ガス[二酸化炭素]・水中の炭酸・大気汚染物質[酸性ガス]・塩分等の影響により、表面部分から内部に向かい徐々に、中性に移行する[水酸化カルシウムから、炭酸カルシウムに変化する]現象)が、鉄筋付近に到達する前に、鉄筋腐食が始まるという早期腐食の現象を引き起こします。これは、中性化が進行したコンクリート中の塩分が、時間経過とともに内部に向かってより濃縮されるためです。
コンクリートの中性化が、鉄筋表面からおよそ20ミリまで達する(通常、柱・梁・耐力壁等の主要構造部はコンクリートかぶり厚、30ミリ、非耐力壁等は、20ミリ程度)と鉄筋腐食が始まってしまうのです。この未洗浄海砂による塩害は、オイルショック(昭和48年)以降の西日本のRC建物に、多くみられるという傾向があります。
また、この塩害による鉄筋腐食は、アルカリ骨材反応と比べ、特にかぶり厚の薄い部分(バルコニー回り等)などでは、築後、比較的早い時期から発生するのが特徴です。
なお、現在のコンクリート生成においては、1立方米中の塩化物量の上限を300gとしています。
※骨材には、細骨材と粗骨材がある。
□細骨材:直径10ミリ以下で、標準網(5ミリ目のふるい)を85%通す砂
□粗骨材:直径25ミリ以下で、標準網(5ミリ目のふるい)に85%留まる砂利
※コンクリートの中性化を判定する方法
測定部位に、10ミリ程度の孔をあけ、10%のフェノールフタレイン溶液を噴霧し、スケール付きのコンクリートチェッカー(内視鏡)で中性化を読み取る方法と、直径20〜30ミリ程度のコア(円筒形)を抜き取り、コア断面全体にフタレイン溶液を噴霧し、中性化を読み取る方法とがある。
いずれも、呈色反応による判定で、断面中、アルカリ性が保たれている部分は、赤変反応を示すが、中性化が進んでいる部分は、色変反応がない。
なお、コア採取部分等の孔には、プラスチック製のふたなどをしておき、後からモンタル充填により埋める。
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