超高層マンション探訪・その2


平成15年までは、日本一の高さを誇るマンションは、埼玉県川口市に1998年(平成10年)に完成した「エルザタワー55」(55階建て)でしたが、2004年(平成16年)、都市基盤整備公団が、JR汐留操車場跡地(シオサイト)に建設した「汐留H街区超高層棟」が完成すると、それを上回る高さのマンションとなりました。
当建設用地は、丁度、JR新橋駅と浜松町駅の中間に位置し、しかも浜離宮公園に隣接しているという、緑に恵まれた周辺環境と都心としての利便性の両面を兼ね備えた、きわめて魅力的な立地です。
それでは、早速ハード面の概略をみてみることにします。

【計画概要】
建物は、次の3棟構成となっています。

1)超高層住宅棟  地下1階・地上56階・塔屋2階(高さ190.25m
2)駐車場棟           地上 8階
3)駐輪場棟     地下2階・地上 1階

住宅棟は、公団スケルトンインフィル(KSI)の基準を採用することによって、スケルトン(躯体)の高耐久性と住戸プランの将来可変性を確保した設計となっています。
用途構成は、1〜2階が店舗で、3階以上が賃貸住居(予定740戸)ですが、45階〜56階の12層分は、公団が、民間業者(住友不動産)にスケルトンのみを賃貸し、インフィル(住戸内部分)の設置は、民間業者に委ねるという「転貸方式」を取っています。
また、特徴的なのは、建物中央部分を全面ボイド(吹き抜け)とし、3階・22階・32階の計3ヶ所に、3層の高さを持つ「空中庭園」や、42階部分に、2層吹き抜けの「パーティールーム」を設け、居住者へのプラスアルファの「ゆとりと憩い」を具現していることです。

【構造骨組と部材強度】
建物平面形状は、偏心(重心と剛心のずれ)を抑えるために整形とした、一部長寸梁等にプレストレストコンクリートを用いた超高強度RC純ラーメン構造を採用しています。(ただし、ボイド部にあるEVシャフトと屋上塔屋に設置されたヘリポートは、S造)
また、低層階部分の柱には、Fc80〜100N/mm2(100Nで、水セメ比20%)の超高強度コンクリートと、直径41ミリで降伏点強度685N/mm2の超高強度異形鉄筋を使用しています。
また、80N/mm2以上の超高強度コンクリートで問題視される、火災等の高熱時に起きる表面爆裂(コンクリート内部に空隙が少ないため、体積膨張による爆裂が起きる)対策として、ポリプロピレン繊維を1%程度混入しています。

【躯体施工】
地上3階以上の部分の躯体は、柱・大梁・バルコニー床・手摺りをフルプレキャスト。床スラブをハーフプレキヤスト。外壁は、ALC(軽量発泡コンクリート)やバルコニーの付設されない外壁部分をプレキャストカーテンウォール(外壁部材を完全固定しないで、水平挙動等の追従性を持たせるために上部等数箇所のファスナー等のみで半固定したもの)とすることにより、躯体品質確保と、1フロア当たりの躯体工事を実働という、工期短縮を実現しています。

【基礎工法】
超高層住宅棟の直下基礎は、GL−30メートルにある東京礫層まで、部材厚1500ミリのボックス型連続壁杭を打っています。さらに、壁杭を格子状に配置することによって、棒状杭(拡底杭)は、壁杭の四隅と中央部の7本のみとしています。また、その他の建物基礎については、アースドリル掘削による場所打ち拡底杭を用いています。

なお、すでにこれを上回る、高さ60階以上のマンションも計画されていますので、数年後には、その座も明渡すことになるかも知れません。



※建築分野では、一般的に圧縮強度が36N/mm2(360kg/cm2)を超えるものを「高強度コンクリート」。60N/mm2 (600kg/cm2 )を超えるものを、「超高強度コンクリート」と呼んでいます。

Fcとは、コンクリートの設計基準強度[材齢28日後の圧縮強度]を指します。上記の圧縮強度が36N/mm2は、設計段階でFc36と置き換えられます。(鉄筋の引っ張り強度を示す「SD」は、Steel Deformed Barの略で、降伏点強度[引っ張られた鉄筋が元に戻らなくなる点]を示します。SD390の鉄筋の場合、390N/mm2が、降伏点強度であることを示しています)

※昭和50年代に、15階程度の中層建築でFc36 、昭和60年代には30階クラスの超高層RC住宅の登場とともに、Fc40クラスの高強度コンクリートが登場しました。

※プレストレストコンクリートとは、荷重によってコンクリートに生ずる引張力を打ち消すために、PC鋼材の緊張力を使って圧縮力を与えたコンクリートのこと。圧縮力の加え方には、ポストテンション(施工時[硬化後]圧縮)とプレテンション(製造時[硬化前]圧縮)方式があります。







塾講義ファイル ◆ハード篇◆
  ■マンションの躯体は、一体何年もつの?
 ■マンションの寿命を縮める要因・その1
 ■マンションの寿命を縮める要因・その2
 ■マンションの劣化と改修・その1
 ■マンションの劣化と改修・その2
 ■マンションの劣化と改修・その3
 ■マンションの劣化と改修・その4
 ■マンションの劣化と改修・その5
 ■マンションの劣化と改修・その6
 ■マンションの耐震改修・その1
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  ■高層マンションの耐震設計等に関する一考察
 ■マンションの安全は、足元から【地盤編】
 ■マンションの安全は、足元から【基礎編】
 ■高さ31m関連規制に関する考察
 ■マンションの消防設備についての考察
 ■マンションの消防設備・詳細(1)
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 ■シックハウス規制に関する考察・その1
 ■シックハウス規制に関する考察・その2
 ■マンションの音環境・その1[外部騒音]
 ■マンションの音環境・その2[隣戸騒音(1)]
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 ■RC超高層マンションの変遷・その1
 ■RC超高層マンションの変遷・その2
 ■超高層マンション探訪・その1
 ■超高層マンション探訪・その2
 ■超高層マンション探訪・その3
 ■超高層マンション探訪・その4
塾講義ファイル ◆ソフト篇◆
 ■マンション訴訟の扉(1)[ペット訴訟]
 ■マンション訴訟の扉(2)[床騒音訴訟]
 ■マンション訴訟の扉(3)[駐車場訴訟]
 ■マンション訴訟の扉(4)[防音瑕疵訴訟]
 ■マンション訴訟の扉(5)[眺望瑕疵訴訟]
 ■マンション訴訟の扉(6)[漏水訴訟]
 ■マンション管理費等滞納対策(1)
 ■マンション管理費等滞納対策(2) 
 ■マンション管理費等滞納対策(3) 
 ■マンション管理費等滞納対策(4)
  ■地震被害とマンションについての一考察
  ■大きな地震の後の建物チェック
  ■マンションの欠陥事例・その1
 ■既存マンションの結露対策リフォーム
 ■新築マンションの定期点検(バルコニー編)
  ■21世紀・現代「超高層マンション考」
 ■高層マンションのインテリアは?
 ■100年マンション・SIマンションって何?
 ■日本のマンションのルーツを探る
 ■中古マンションの価格はどうやって決まるの?
 ■マンションの緑化についての考察
 ■あこがれのフローリングにしたい
 ■マンション法(区分所有法)の要点を掴もう

 【その1】
 区分所有権/共用部分を利用する権利/
   共用部分の所有持分/敷地の所有権の持分

 【その2】
 区分所有者の団体/管理者の選任等/管理者の義務
  /管理規約の設定・変更・廃止/管理組合の集会

 【その3】
 管理組合法人/法人の理事・監事/法人理事の義務
 【その4】
  違反行為停止等の「裁判外請求」/違反行為停止等の
  「裁判による請求」/専有部分使用禁止の
  「裁判による請求」 /専有部分競売の「裁判による請求」

 【その5】
  マンションの復旧/大規模滅失時の買取請求権/
  罰則について

 【その6】
  マンションの建替え/売渡し請求権/再売渡し請求権
  /団地型マンションの建替え






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