高層マンションの耐震設計等に関する一考察


現在では、「高層マンションは、地震に強い」ということが、一般の人にも大分認知されてきましたが、ではなぜ、高層マンションが地震に強いのかといわれると、これは、かなり専門的な話になるので、建設関係者でも、実際説明に苦慮するところです。
そこで、今回は、高層マンションの強さの秘密となる耐震設計の一部や、今話題の免震・制震構造を垣間見てみようと思います。


耐震設計

まず、マンションを含め、高層建築物(特に、60m超の超高層建築物)の耐震設計をする場合、構造体に作用する地震力をコンピューターにより、解析(各階ごとに、設計用地震力を入力し計算する)し、構造体の各部材の強度や大きさを決めます。

設計用地震力は、高層建築物に関わらず、以下の要素により、決定される。
 □地域特性[地域係数](地震の少ない地域は減らす)
 □地盤特性[振動特性係数](建物と地盤の固有周期が近いと、共振しやすい・軟地盤は、地震力
      が大きい等を考慮)
 □建物形状特性[形状係数](建物のバランスが良くない場合は、地震力を大きく見込む)
さらに、高層建築物の場合などでは、
 ■地震学・地震工学を元に、過去の地震・活断層の解析や、今後の地震発生の確率的評価等も
      行なう。

そして、計算した構造体が、実際の地震時にどのような挙動を示すかを、建物の「振動モデル」(立体骨組みモデル平面骨組みモデル串だんご型モデル等)をつくり、その基礎部分に、地震力を入力して、シミュレーション解析(地震応答解析)します。つまり、一般の建物と比べ、高層建築物は、より緻密なプロセスを経て、地震などの外力に対する構造の安全を確認しているのです。


免震構造

阪神大震災以後、中高層マンションを中心に、免震装置を設置したマンションが増えていますが、昨今では、30階以上の超高層マンションで、免震化したものも作られています。
もともと固有周期が長い、超高層建築物で免震化すると、固有周期はさらに長くなるので、建物全体としては、よりしなやかに揺れることになり、建物に加わる地震力を一段と弱めることができます。これは、固有周期の長さにほぼ反比例して、地震力が小さくなることによります。
たとえば、高さ95メートル(30階程度)の固有周期約2.0秒の建物を免震化し、仮に、周期を2倍の4.0秒にすると、建物に加わる地震力は、平均約50%低減することになります。

ただ、欠点として、建物全体がかなり柔らかくなるので、風に対しても、揺れやすくなることです。そこで、居住用のマンションなどの場合は、減衰力のやや大きめのダンパー性能を有するもの(鉛ダンパーや鋼材ダンパー等)を設置し、小さい水平荷重に対しては、応答を小さくするようにしています。そのため、結果的には、中小の地震に対しては、免震効果も低くなります。


制震構造

免震構造が、建物の底部にのみ装置を設置するのに対して、制震構造は、建物頂部各階の間柱柱の間(ブレース部材として)などに、装置を設置する構造となっています。また、制震装置は、ダンパーの方式により、主に以下の2つに大別されます。

【1】架構ダンパー方式(免震装置のダンパーも、基本的にはこれと同じ形式)
  *履歴系ダンパー(鋼材ダンパー・鉛ダンパー)
    主に、建物の層間変形を制御する。地震力自体の低減効果は低い。コスト的には、粘性系よ
    り安い。
  *粘性系ダンパー(オイルダンパー・粘性体ダンパー)
    小さな層間変形から制御できる。地震力自体の低減効果も高い。(建物に加わる地震力が、
        各階ほぼ均一に30〜40%弱まる)ただ、揺れ方は、一般の建物と同様上階ほど揺れる。

【2】マスダンパー方式
これは、建物と同じ固有周期の振り子(建物重量の1%程度)を、建物頂部に設置し、建物が揺れはじめると、振り子が共振し、振り子の揺れた分だけ、建物の揺れは小さくなるというもの。



なお、制震装置が、中程度の地震の都度、点検が必要だったり、レベル1(震度5強程度)前後の地震動を数回(例えば、履歴系ダンパー部分の相対変位で、20センチ程度の変位を累計で、50〜60回程度)受けたら、ダンパー等の交換が必要なものが多いのに対して、免震装置の場合は、地震動を受けても、ほとんどメンテナンスフリーのものが多くなっています。(静態耐用年数自体は、どちらも60年程度)




       




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 【その3】
 管理組合法人/法人の理事・監事/法人理事の義務
 【その4】
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  「裁判による請求」/専有部分使用禁止の
  「裁判による請求」 /専有部分競売の「裁判による請求」

 【その5】
  マンションの復旧/大規模滅失時の買取請求権/
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 【その6】
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