RC超高層マンションの変遷・その1


日本における超高層ビルの幕開けは、ご存知のように武藤博士らの提唱する「柔構造理論」により、昭和43年に完成した「霞ヶ関ビル」(36階建て)です。建物構造が強さ(剛性)とねばり(靭性)の両方を兼ね備えれば、地震の多い日本においても、超高層建築が可能であるというこの理論に一番相応しい骨組みは、鉄骨構造(S造)でしたが、ただ、この鉄骨構造は、当時からすでに社会的要請の多かった超高層集合住宅には、不向きなものでした。
日中だけアクティブに使用するオフィスなどと違い、終日を通して快適な居住性を要求される住まいにとっては、S造の弱点となる、
  @強風時の風揺れの問題
  A界床や界壁の遮音性の問題
の難問があったからです。

※ただし、公団では、昭和49年にS造で5棟の超高層集合住宅の実績があったが、それ以後は、公団でもS造による超高層集合住宅は、まったく建築されていない。

たとえ、超高層という付加価値があっても、風揺れしない、遮音性に優れている、などのしっかりした基本性能がなければ、マンションとしての長期的な市場価値は見出せないということは、誰の目にも明らかでした。
一方、マンションを作る側・売る側の事情としても、超高層マンションを安定的に供給するには、短工期低コストという2つの条件に見合う構造が必要でした。
以下は、構造種別ごとに、超高層マンションの必要条件を良否判定したものですが、この表からも、建物のねばり以外は、RC構造が超高層マンション建築に向いていることが伺えます。

 ねばり  風揺れ  遮音性  低コスト  短工期
    S造       ×    ×    △   
  SRC造    ○    ◎    ◎    △    △
   RC造     △    ◎    ◎    ◎    ○


そこで、これらの条件に一番合致している構造種別ともいえるRC造に、ねばりを持たせることで、何とか超高層集合住宅を作れないかと、最初にトライしたのが、その後「超高層のカジマ」として名を馳せるようになった鹿島建設でした。
この最初の建物は、
昭和49年に東京都豊島区に、鹿島建設の社員アパートとして建築された「椎名町アパート」でした。構造形式は、純ラーメン構造で、建物を支える柱に十分な強度とねばりを持たせるために、柱帯筋を断面で外側と内側に二重に巻いた(特に、内側の帯筋は、円形のらせん状に巻いてせん断補強を強化した)「鹿島スパイラル柱」の開発と、1階から5階までの外周柱(22本)に、PC鋼棒によるプレストレストを与えることにより、RC造でも20階の超高層建築(ただし、最終的には、近隣との関係で18階とされた)を日本で最初に可能としました。また、この時の構造部材の強度は、最大でコンクリートがFc30・鉄筋がSD390と、まださほど高性能なものは使われていませんでした。

その後、鹿島では、
昭和62年に、RC造の本格的な超高層マンションである「パークシティ新川崎・高層住棟」(30階建て)を手掛けました。
この建物の構造形式は、やはり純ラーメン構造でしたが、30階という自重に対する耐力と、大きな水平過重に対するねばりを持たせるために、下層階の外周柱は、スパイラル柱にさらに改良を加えた「
芯筋柱」(スパイラル柱の中心部分に、帯筋を巻いた主筋を4本追加した)と、下層階の柱すべてに、Fc42という高強度コンクリートが使われました。また、基礎は、井桁状に組まれた基礎梁(せい3メートル)と地下約32メートルにある支持層(砂礫層)まで、建物外周部地下に「連続壁杭」(その内側には、拡底杭)を配置し、建物を高層化したことによる転倒メーメントの増大に伴う、下層階外周柱とその直下にある基礎外周部の引抜き力増大に、前出の芯筋柱とともに、対抗する設計とされました。


※建築分野では、一般的に圧縮強度が36N/mm2(360kg/cm2)を超えるものを「高強度コンクリート」。60N/mm2 (600kg/cm2 )を超えるものを、「超高強度コンクリート」と呼んでいます。

Fcとは、コンクリートの設計基準強度[材齢28日後の圧縮強度]を指します。上記の圧縮強度が36N/mm2は、設計段階でFc36と置き換えられます。(鉄筋の引っ張り強度を示す「SD」は、Steel Deformed Barの略で、降伏点強度[引っ張られた鉄筋が元に戻らなくなる点]を示します。SD390の鉄筋の場合、390N/mm2が、降伏点強度であることを示しています)

※昭和50年代に、15階程度の中層建築でFc36 、昭和60年代には30階クラスの超高層RC住宅の登場とともに、Fc40クラスの高強度コンクリートが登場しました。







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