地震被害とマンションについての一考察


<過去の地震被害>

地震は、その発生メカニズムから、大陸プレートが、海溝に沈み込む反発力で起こる「海溝型地震」と、地表面の断層がずれて起こる「内陸型地震」があります。この2つのタイプの地震の同一震源地での発生周期は、海溝型地震で、M8.0以上の巨大地震が、およそ100年間隔、内陸型地震で、M7.0以上の大地震が、およそ1000年間隔といわれています。
また、過去100年間のM7.0以上の大地震(海溝型・内陸型併せて)をみると、1900年5月12日の宮城県北部地震(M7.0)から、2000年10月6日の鳥取県西部地震(M7.3)まで、20数回にも上ります。以下に、その過去100年間の大地震の中で、特に被害(死亡数)の大きかったものをまとめてみます。

1923年(大正12年)関東大震災 M7.9  142,807人
1927年(昭和 2年)北丹後地震  M7.1  3,769人
1933年(昭和 8年)三陸沖地震  M8.1  3,064人
1943年(昭和18年)鳥 取 地 震  M7.2   1,083人
1944年(昭和19年)東南海震災  M7.9   1,251人
1946年(昭和21年)南 海 地 震  M8.0   1,443人
1948年(昭和23年)福 井 地 震  M7.1   3,769人
1995年(平成 7年)阪神大震災 M7.2  6,435人



<阪神大震災のマンション被害>

1995年1月17日午前5時46分、北緯34.6度、東経135.0度、深さ18キロメートルを震源とするマグニチュード7.2の内陸型の大地震が発生しました。この地震による死亡者数は、上記のように、行方不明者を含めて、実に6千数百人、死因の88%が圧死、さらにその3分の1が、65才以上の高齢者でした。多くの人が、倒壊した建物の下敷きとなったのです。
一方、分譲マンションでの死亡者数は、鉄筋コンクリートという堅固な建物構造により、一部倒壊した建物も、局部倒壊に留まり、非公式ながら、十数人という推計もあります。
また、死亡の直接原因となった建物被害の総体を見ると、家屋全半壊257,890戸、家屋焼失7,465戸に上っています。分譲マンションについての建物被害は、公式の総体集計はありませんが、東京カンテイが、兵庫県の5,352棟について、現地調査を行なっています。


損壊なし・損壊軽微  4,808棟  90%
損壊あり  544棟  10%

 [損壊内訳
倒壊・大破(使用不能)  83棟  1.5%
中波(要大規模補修)  108棟  2.0%
小破(要補修)  353棟  6.5%



<マンションでの揺れ方>

阪神大震災では、地震継続時間約10秒、揺れ方向としては、直下型地震のため、主に上下方向の突き上げるような揺れと、南北方向の揺れを強く観測しています。
阪神大震災後、震央から40キロ離れた大阪の高層マンション(15階建て)と超高層マンション(31階建て)で実施された以下のようなアンケート結果があります。


揺れの印象
短い周期の揺れ 長い周期の揺れ 振り回されて分からない
6〜15階居住者     56%     32%      24%
31階居住者     25%     25%      50%

家具の転倒
  異常なし   移動 した   転倒した
6〜15階居住者     24%       39%      37%
31階居住者     44%     37%    19%


般に、固有周期(揺れの一往復の長さ)は、RC建物で、高さ×0.02秒と言われているので、例えば、6階と31階では、31階の方が、およそ1.5秒長く揺れていることになります。このことは、振り回されて分からないと答えている人が、6〜15階居住者が24%に対して、31階居住者は、50%にも上っていることからも伺えます。

しかし、家具の転倒状況をみると、6〜15階よりも、31階の方が逆に少ないという結果が出ています。このことから、地震時の応答加速度は、超高層階より、中高層階の方がより大きいということが推測されます。
なお、建物の高低差による固有周期の長短のほかに、地震動の周期は、地盤の硬軟にも影響される(ex.東京山の手で、約0.3秒の時、ウォーターフロントでは、約1.0秒と長い)ので、軟地盤地域のマンションの場合には、さらに長い揺れを感じることになります。








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