マンションの消防設備・詳細 (2)
消防法(第8条)では、高さ31mを超える建築物を特に「高層建築物」と定義していますが、これは、建物階数でいうと丁度11階建て以上の建物ということになります。
そして、この11階以上の高層階では、消火活動や避難活動等の難度が高まる(消防はしご車の届く31m程度との関係)等から、消防法上も、無窓階や地階同様、一般階以上に厳しい規制が敷かれています。消防設備・詳細の第2回目の今回は、消防設備の中でも特に、階数11階以上の高層階に必要な消防設備についての考察です。
<スプリンクラー設備>
[設置基準]
階数11階以上の階を共同住宅の用途に使用する場合には、消防法施行令第12条第1項第9号により、住戸内にスプリンクラー設備の設置が義務づけられています。
ただし、220号特例基準適用マンションでは、
■2方向避難かつ開放廊下型マンションで、11階以上の住戸等の壁・天井を準不燃材以上の内装制限をしている場合には、全階設置免除。
■開放廊下型マンションで、11階以上の住戸等の壁・天井を準不燃材以上の内装制限をしている場合には、11階〜14階までは、設置免除。 となります。
※スプリンクラー設備は、平成8年以前建設のマンションでは、設置されていないマンションもあります。
[共同住宅用スプリンクラー設備]
220号特例基準の適用を受けるマンションの場合には、一般のスプリンクラーではなく、共同住宅専用に開発された「共同住宅用スプリンクラー設備」を設置する必要があります。これは、火災発生時に、ヘッド部分の感熱部で、自動的に熱を感知して散水を開始するという機能自体は、一般のスプリンクラーと同じですが、特に以下のような特徴があります。
■マンションの場合、オフィスビルなどと違い、各室が小面積に区画されていることから、閉鎖型スプリンクラーでも特に「小区画型ヘッド1種」(散水有効半径が、一般の2.3mに対して2.6mと広いタイプ)を採用。
■散水ヘッドに衝撃を与えると、火災でなくても放水することから、「天井埋め込み型」を採用。
■散水が始まると同時に、その住戸の戸外表示器の赤色灯が点滅し、さらに、音声警報により出火場所を報知する。
■放水を制止する「制御弁」が、各住戸単位(共用廊下側)に設置されている。
また、通常スプリンクラーは、ヘッド部分まで水がきている「湿式」ですが、寒冷地で凍結のおそれのある場合には、不凍液を使用したり、配管に圧縮空気を満たしておく「乾式」などが採用されます。なお、水源は、別に設けられており、加圧送水(ポンプ)装置によって送水されます。
<非常コンセント設備>
これも、消防法令により、11階以上の階に設置が義務づけられています。これは、消防隊員が消火活動上必要なもの(ex.救助のために電動カッター使用)で、単相交流100V15A以上の電源に30分以上の非常電源を付置し、階段室等の消防隊員の使用しやすい位置に設置します。この非常電源の供給方式には、非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備の3種類がありますが、建物規模や建物用途等により、それらを使い分けることになります。
また、非常電源用の配線は、コンジットチューブ等の金属管内配線とし、それらをコンクリート内に埋め込む等の「耐火保護」としなければなりません。なお、非常コンセント設備の設置範囲は、半径50m以内毎となります。
<誘導灯>
消防法令第26条により、11階以上の共用廊下等には、避難用の「誘導灯」を設置しなければなりません。誘導灯には、通路誘導灯(白地に緑文字)と避難口誘導灯(緑地に白文字)があり、さらに、通路誘導灯には、室内誘導灯と廊下誘導灯がありますが、マンションの場合には、室内誘導灯の設置は免除となっています。
また、廊下誘導灯の設置基準は、廊下壁高1m以下(床面も可)に10m〜20m間隔(照度による)で設置します。
なお、避難口誘導灯については、歩行距離10m以内で容易に見通し識別でき、避難口までの歩行距離が20m以内の場合には、設置が免除となります。
<連結送水管>
連結送水管は、消防法令第29条により、7階建て以上のすべての建物及び、5・6階建ての建物でのべ床面積6000u以上の建物等に設置が義務づけられていますが、さらに、11階以上の階には、放水口を「双口形」とすると共に、近くに「放水用具(長さ20m以上のホース4本・筒先2本以上)」の格納が必要となります。
また、高さ70mを超える階では、途中階で水圧を再加圧するための「ブースターポンプ」を高さ70m以内毎に設置し、さらに、通常の送水管が「空配管」であるのに対して、この場合には、高架水層と配管を連結して、取水時間を短縮できるよう「湿式」としなければなりません。
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