マンション法の要点をつかもう <その5>
自分のマンションが、地震や火災等の災害で、建物の一部が使用不能となった場合は、各区分所有者は、建物を修繕(復旧)するか、はたまた、思い切って建て替えるかの二者択一が迫られます。このような場合には、各自の権利や生活権などの思惑が入り混じることとなり、大規模なマンションほど、複数の区分所有者の意見を一本化することは困難となります。
阪神大震災で被災したマンションでは、復旧か建て替えかで意見が分かれ、最後には、感情がエスカレートして、裁判にまで持ち込まれるような大きなトラブルとなった事例もありました。
なお、被災により建物が全壊(全面使用不能)した場合には、マンション法(区分所有法)は適用されなくなりますので、阪神大震災後に制定された「被災マンション法」の適用(災害指定を受けて初めて同法適用)を待つことになります。
■マンションの復旧
@建物価格の2分の1以下が使用不能(滅失)となった場合の管理組合による共用部分の復旧は、区分所有者の頭数と議決権(共用持分等)のそれぞれ過半数賛成で行なうことができる。
A建物価格の2分の1を超える部分が使用不能(滅失)となった場合の管理組合による共用部分の復旧は、区分所有者の頭数と議決権(共用持分等)のそれぞれ4分の3以上の賛成で行なうことができる。
※区分法では、@の小規模滅失の場合には、共用部分の復旧でも各区分所有者が独断で行なえることになっているが、実際は規約で、総会決議事項とされている場合が多い。
※@の小規模滅失の復旧決議でも、共用部分の用途・構造等を従前と違うものにする場合には、規約で別段の定めがない限り、過半数決議ではなく、4分の3以上の賛成が必要となる。
■大規模滅失時の買取り請求権
@上記Aの大規模滅失の復旧決議に賛成しなかった者は、賛成した者に対して、自分の区分所有権(敷地利用権含む)を時価で買い取ることを請求することができる。
A建物価格の2分の1を超える大規模滅失が起きてから6ヶ月以内に、復旧決議も建替え決議もなされない場合には、区分所有者の誰もが、他の区分所有者に対して(誰に対しても)、自分の区分所有権(敷地利用権含む)を時価で買い取ることを請求することができる。
※買取り請求された者は、それを拒否することはできず、請求者に対して必然的に支払い義務を負う。
※買取り請求された者は、さらにそれを他の区分所有者に対して買取り請求することができ、それが繰り返された場合、理論的には、最後にただ一人だけが残り、建物全部の区分所有権を持つことになる。
■罰則について
マンション法(区分法)では、管理者や理事が以下の行為をした場合、その制裁として、20万円以下の過料に処せられる旨規定しています。
@規約・総会議事録・書面決議の保管義務違反
A規約・総会議事録・書面決議の閲覧義務違反
B総会議事録の不作成又は、不正作成
C事務報告義務(年1回)違反
D法人の場合の登記義務違反
E法人の場合の財産目録不作成又は、不正作成
F法人の理事・監事の選任手続き懈怠
尚、過料とは、民法や行政法に違反した場合の秩序罰(行政罰)で、刑法の科料(刑事罰)とは異なります。
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