RC超高層マンションの変遷・その2


1990年代前半(平成6年頃まで)のRC超高層建築における構造部材の強度は、コンクリートがFc42(設計基準[圧縮]強度:42N/mm2)、鉄筋がSD390(降伏点[引張り]強度:390N/mm2)までが上限でしたが、1990年代後半(平成7年以降)に入り、より高い強度の構造部材が使われるようになりました。
鹿島建設が、1996年(平成8年)に建てた、RC超高層マンション「ザ・シーン城北」(45階建て)では、下層階の柱にFc60の高強度コンクリートと、柱・梁の主筋及び下層階の柱芯鉄筋にSD490の高強度鉄筋が、それぞれ初めて採用されました。(この時の構造形式は、純ラーメン構造)

また、大規模RC建築や高層RC建築においては、品質管理・工期短縮などの点から、今や当たり前のようになっているコンクリート部材のプレキャスト化が促進されたのは、1990年代前半(平成元年以降)からでした。
1990年代後半(平成7年以降)頃の、主なプレキャスト部材による施工工程の一例としては、まず、フルプレキャスト柱を建て込んだ後、あらかじめ地組みしておいた梁鉄筋と鋼製システム型枠を組み立て、その上にハーフプレキャストの床スラブを敷設して、さらにその上から場所打ちコンクリートを打設するといったもので、この頃ですでに、1フロア当りの施工サイクル4日という、現在とほぼ同レベルの短工期を実現していました。

一方、RC超高層建築の構造形式は、当初こそ純ラーメン構造が主流でしたが、1990年代後半(平成7年以降)になると、全面均一スパン柱構造で、空間的に制約の多い純ラーメン構造から、より大スパン空間の確保ができ、住戸内の設計自由度の高い構造として、

@(ラーメン構造)+(センター耐震コア壁
A チューブフレーム(外殻多柱)構造

という、RC超高層としては、新たな構造形式による建物設計がされるようになりました。

前者は、建物中央部の階段やエレベーター部分を壁厚350〜750ミリの高強度耐震壁が取り囲む「センターコア耐震壁」とその周囲(四方)の住戸内のフレーム部分(柱)とを、小梁の出ないプレストレストプレキャスト床スラブで連結することによって、大梁と小梁を同時になくすことができ、それにより、住戸内の上下空間に余裕が生まれるため、耐震性の向上と同時に、住戸内の仕上げ床面のフルフラット化や、設備系シャフトの共用廊下側集約を実現したものです。
また、後者のチューブフレーム構造の一つである、ダブルチューブ構造の代表的な建物としては、2001年(平成13年)に、東京都練馬区に完成した35階建ての「ディアマークス・キャピタルタワー」があります。

建物中央は、全面ボイド(吹き抜け)で、ボイド周りの内周チューブ(住戸玄関側の柱)の内側部分の共用廊下は、片持ちスラブとし、1階から30階までの外周チューブを柱スパン3.2メートルという極短スパン梁のアウトポール逆梁(バルコニー手摺壁部分に柱を配置)工法と、厚さ330ミリのフラットボイドスラブの採用により、内周チューブ(柱)と外周チューブ(柱)間の最大スパン10.2メートルを、無柱・無梁空間としています。この場合も、設備系パイプシャフトを共用廊下側に集約するために、水回りスペースの床下設備配管部分をダウンスラブ化して対応しています。

ただ、チューブ構造は、柱スパンの狭い外周チューブの高剛性により、一般のラーメン構造に比べて、地震時の偏心(建物重心と剛心のずれ)によるねじれに対しては強いのですが、短スパン柱の横架材である梁も短いことから、梁のねばり確保が難しいことや、隅柱以外ラーメン構造のような直交梁を有しない構造であるため、水平過重時の隅柱への剛性負担が大きい(4本の隅柱以外の柱に、地震力などの水平過重を分担する直交梁がないため、隅柱にだけ2方向の梁からの力が集中する)あるいは、超高層マンションの最大の魅力である眺望確保の上で、バルコニー側の短スパン柱が、ワイドビューを妨げてしまうなどの理由から、分譲マンションの建築実績としては、今後もそう多くはないかもしれません。

今後、RC超高層建築も、特に分譲マンションの構造形式においては、コア付きラーメン構造等の複合ラーメン構造をベースとして、耐震性と居住性をより追求した各種「制震装置」「免震装置」を付加したスーパー複合ラーメン構造の開発が、鹿島を初め、大成・竹中・清水等のスーパーゼネコンを中心に、より増えていくものと思われます。







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 【その3】
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 【その4】
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