マンション暮らしで一番怖いのは、やはり、平穏な暮らしを突如襲う「地震」でしょう。
他県での大きな地震発生のニュースを聞くたびに、もし、自分の町にも大地震がきたら、果たして自分のマンションは、大丈夫だろうか?いったい、どれほどの被害をうけるのだろうか?などと不安にかられる方も多いと思います。ご存知だとは思いますが、震源地での地震エネルギーの大きさ(マグニチュード)と実際の自分の居住地域で感ずる地震の大きさ(震度)とでは、震源地からの距離や地盤硬軟・地形によって、大分差がでます。また、マンションなどの高低差のある建物では、当然上階にいくほど固有周期(地震振幅)が、大きくなります。ですから、地盤の柔らかい地域の高層階(制振・免震装置がない場合)では、近接地域の地盤のいい地上部と比べると、たとえば、同じ震度4の地震でも、体感的には、かなりの揺れの大きさの差があることになります。
今、マンションの耐震性で問題視されているのは、1981年(昭和56年)6月1日以前の着工(建築確認日)の建物です。これは、1978年の宮城県沖地震(M7.0)の被害を鑑み、1981年6月1日に施行された新・耐震設計法の導入(建基法施行令改正)以前の建物に、あの阪神大震災での被害が甚大だったことに起因しています。
旧耐震基準で建てられた分譲マンションのストック数は、およそ100万戸(全体の4分1)にも上るといわれています。そして、その中でも特に、旧耐震基準で建てられた中層以上のラーメン構造の桁行方向(建物の長辺部分)や、一階部分のピロティ部分の耐震強度が危惧されています。
※梁間方向の強度は、通常耐震壁の面積が大きいので安全性が高い。
その他の壁式構造やPCa(事前製作部材使用)工法などの建物については、比較的耐震性の高さが認められています。
しかし、今あなたのお住まいのマンションが、いつ着工したか?どんな構造工法かは、ほとんどの方がご存知ないかもしれません。この際、ご自分のマンションの安全性を確かめる上でも、管理組合や管理会社などに、それらをぜひ確認してみて下さい。
以下に、新耐震基準設計のマンションも含めて、築10年以上で中層以上のラーメン構造のマンションを前提に、居住者ができる「大地震後の目視による建物チェック」について総括してみますので、参考にして下さい。
【1】柱・梁部のチェック
※柱は、上下の端部、梁は、左右の端部と中央部下部付近にひび(室内では、クロスに浮きヤブレ)はないか。
【2】玄関ドアのチェック
※開閉がスムーズか、外部から見てドア枠周辺にひびや塗装の浮きはないか。
【3】掃き出し窓のチェック
※開閉がスムーズか、クレセントがスムーズに開閉できるか。
※外部から見て、サッシ枠周辺にひびや塗装の浮きはないか。
【4】バルコニー上げ裏(天井部分)のチェック
※外壁接続部付近にひびや塗装の浮きはないか。
※しばらくして、雨漏りが起きていないか。
【5】共用廊下側の窓部のチェック
※窓の開閉がスムーズか。
※廊下側から見て、窓枠回りにひびや塗装の浮きはないか。
【6】貯湯式給湯器のチェック
【7】高架水槽のチェック
*きっちり固定されているか、固定部にガタツキや傾きなどがないか。
【8】外部鉄骨階段のチェック
※建物と階段の接合部にガタツキやズレ等がないか。
※昇降時、揺れを感じないか。
【9】ピロティ部(壁のない柱だけの空間)のチェック
※柱の上下の端部にひびや塗装の浮きがないか。
※梁は、左右の端部と中央部下部付近にひびや塗装の浮きはないか。
【10】エキスパンションジョイント(建物の連結部分)のチェック
※連結用カバー(床部)に段差やズレなどができていないか。
以上の内、一つでも、該当するような部位があれば、管理会社の技術者などに点検を依頼して下さい。(念のため、有料か無料かを確認して下さい)
尚、旧耐震基準で建てられた中層以上のラーメン構造のマンションで、耐震診断の検討をまだされていないようであれば、早めに検討されることをお勧めします。