<プロローグ>
住まいを建てるとき、上物(建物)だけをどんなに堅固に作っても、建物を支える基礎や地盤に問題があれば、砂上の楼閣のように、長く安心して住むことはできません。特に、マンション等のRC造やSRC造の大型建造物は、木造建造物などと比べ、建物自体の重さ(自重)もかなりの重量になるので、それを支えるための強固な基礎の構築とともに、より良好な地盤での荷重支持が大切になります。そこで、今回は、マンションを見えないところで支えている「地盤」について考察してみます。
<支持層とは?>
さて、建物には、風圧や地震などの外力とともに、さまざまな荷重(固定荷重・積載荷重・積雪荷重)が加わります。そして、それらの鉛直荷重は、最終的には、基礎を介して地盤に伝えられます。その地盤の中でもこれらの荷重に耐えられるだけの十分な強度を持った地盤を特に、「支持層」(支持地盤)といいます。この支持層は、一般には、海岸域の低地では深いところに分布し、丘陵地や河岸段丘などでは、比較的浅いところに分布しています。支持層が浅い場合は、直接基礎などにできますが、支持層が深い場合には、支持層までしっかり杭を打ち込み(50p以上)、建物を支えることになります。
<N値とは?>
土木や建築において、地盤の固さや締り具合を示す指標として、一般に使われているのが「N値」です。N値とは、質量63.5Kgのハンマーを75センチの高さから、自由落下させて、サンプラー(鋼管パイプ)を地盤に30センチ打ち込むのに要する打撃数をいいます。通常、N値20以上が、橋梁等の工作物等の基礎として支持力が期待できる硬質な地盤といわれていますが、マンションなどの居住用でしかも、大型の建築物の場合には、安全値を見込んで、より硬質な「
N値50以上」を支持層としている場合が多いようです。
<土質の種類>
土質は、粒子の大きさによって、以下のように大別されています。
粘性土 |
砂質土 |
粘土 |
シルト |
砂 |
れき |
〜0.005ミリ〜 |
0.07ミリ〜 |
2.00ミリ〜 |
実際の地層の構成は、これらの土質が入り混じったものとなっているので、ロータリー式機械ボーリングなどによる地盤調査(標準貫入試験等)で深さ1mごとに、土質・含水量・粒度分布・強度(N値)などを精査し、建物を支える地層を決めます。
また、
砂質土で地下水位が高い場合には、地震時の「
液状化」や、
粘性土で地下水位が高い場合には、建物等の鉛直荷重により数十年掛けて、水が抜けていく「
圧密沈下」のリスク予測やその対策などの検討が必要となります。
<液状化現象について>
液状化現象という言葉は、あの阪神大震災を機に、マスコミ等でもよく使われるようになったので、今日では、より多くの人が知るところとなりました。液状化は、次の3つの要素が組み合わされて起こるといわれています。
【1】
ゆるめの砂質層
【2】
地下水
【3】
振動
この3要素による発生メカニズムを簡単に説明すると、
まず、地下水を多く含んだゆるめの砂質層に、地震などの強い振動が加わると、砂は密になろうとして沈む。(又は、左右に移動する)そして、その時、砂の間の水が、行き場を失って圧力を受ける。結果、その水への圧縮力の反発力で、砂同士の固着が一段とゆるみ、さらに砂が液体のように上方向に動き出し、地盤の脆弱部分などから地表面に流れ出る。
仮に、杭基礎のマンションで、このような液状化が支持層に起きた場合、杭は支持力を失うことになり、また、液状化が支持層途中の中間層に起きた場合は、杭中間部での破断につながります。
阪神大震災では、この液状化により、ハーバーハイウェイなどの橋の基礎に、大きな被害が出ました。
こういった液状化を未然に防ぐには、まず第一に、地盤調査段階で、建物の支持層となる地質や中間層に、液状化の可能性がある砂質があるかどうかを慎重に判断することです。その上で、液状化の恐れがあると判断した場合には、支持層の深さや建物荷重等により、より経済的で効果的な各種対策工事(主な工法として、密度増大工法・固結工法・置換工法・水位低下工法等)を比較選択することです。
阪神大震災時、六甲アイランドやポートアイランドでは、これら液状化対策の効果がはっきりと証明されています。