超高層マンション探訪・その1
高いものほどよく売れるという、異常現象を生み出したあの「バブル経済」の崩壊により、不動産の資産デフレが加速されると、準大手企業ばかりか、名だたる大手上場企業やJRなどの公営的企業までもが、次々と都心の大型社有地を手放すようになりました。その結果、都心部の地価は一段と下がり、皮肉なことに、かつては、マンション開発用地としては手が出しにくかった都心地が、大規模マンション開発の格好の適地となったのです。
銀座1丁目から、地下鉄有楽町線でおよそ10分、「辰巳」駅下車、歩いて6分ほどのところに巨大な2棟のマンションが立ち並んでいます。準大手ゼネコンの戸田建設が設計施工し、三菱地所が分譲した「Wコンフォートタワーズ」です。
超高層マンション探訪の第1回目の今回は、東京都江東区東雲のウォーターフロントに2002年に建設された、この大規模タワー型マンション(総戸数1149戸)です。
【骨 組】
高さ180メートル(54階建て)のA棟と、高さ150メートル(45階建て)のB棟の巨大ツインタワーを支える構造形式は、なんとRC構造です。(ただし、スーパーHRCと呼ばれる超高層対応高性能RC)
建物中央部分を全面ボイド(吹き抜け)とし、その四方をワンフロア14戸(基準階の場合)の住戸が、回廊状に取り囲んだ、変形ダブルチューブ構造(アウターフレームの柱スパンを広げる[ワイドビュー確保目的]ために、センターフレームの剛性をより高めた[柱スパンを縮め、柱断面を大きくした]バンドルフレームといわれるスーパーラーメン構造)です。
A棟の場合、センターフレーム(回廊側柱)とアウターフレーム(バルコニー側柱)のスパンは、9.5メートル(つまり、住戸の奥行き)、横方向の柱スパンは、27.5メートルで、プレストレスト(工場打ちのプレテンションタイプ)RC大型スラブ(床下配管確保とバリアフリー対応のため段差スラブを採用)により、それ以外の柱・梁の一切ない、大空間フレームを確保しています。
※住戸間の間仕切り(戸境壁)は、超高層ではお馴染みの乾式パネル工法
また、地震力などの水平過重に対しては、センターフレームの柱間に12本の「制振柱」(上下に分離された柱を、低降伏点鋼を用いた「制振デバイス」で繋いで、地震力などの左右の挙動を抑制させるもの)を配することにより、高い制震能力(各階の層間変形角[上階と下階の水平方向のずれ幅]が均一化され、20%程度低減)を確保しています。
【構造部材】
1階部分(階高3.7m)の柱には、Fc(コンクリート設計基準強度)100N/mm2のシリカフューム含有超高強度コンクリートと、降伏点強度685N/mm2の超高強度異形鉄筋を使用したCFT(鋼管内にRCを充填したもの)構造となっています。
※その他の階の柱・梁は、Fc32〜80と、SD(異形鉄筋)390〜490。
また、高層マンションでは、今や定番化しつつあるプレキャスト工法(工場完成部材を現場で接合する工法)により、施工精度の確保と、工期短縮を実現しています。
※柱・梁は、フルプレキャスト。大型段差スラブは、現場で一部打ち増しするハーフプレキャスト工法を採用。
【基礎工法】
この建設用地は、東京湾の埋め立て地なので、支持層(細砂層)までの距離が、およそ50メートルと深く、さらに中間層で液状化現象の起きやすい地盤であることから、「ボックス型複合杭工法」という、国内最高レベルの強度をもつ杭工法が用いられています。
これは、30本の大小の場所打ち拡底杭(底部が広がっている杭)を連続壁杭で囲み、地震力や転倒モーメントのほとんどをこの壁杭に負担させるというものです。また、連続壁杭の部材の厚は、1800ミリ(A棟)と日本最大級のものとなっています。
以上、ハード面の概略を見てきましたが、このWコンフォートタワーズは、2002年の分譲開始当初から、首都圏の高層物件としては、「かなり安い」と評判になり、周辺環境や眺望のよさともあいまって、モデルルームへの来場者は、ミドル世代(30〜40代)の中流ファミリー層(年収500〜1000万)を中心に、のべ18,000組。登録申込み件数は、10,053組という凄まじい数に上りました。(平均倍率およそ9倍)
ちなみに、分譲価格帯は、1,600万円から、1億7,900万円。最多価格帯は、3,500万円でした。
|
|