マンションの劣化と改修・その3
今回の「劣化と改修」は、マンションの修繕工事の中でも、最も費用のかさむ工事の一つとなる「外壁の修繕工事」について考察します。
マンション管理センターの平成13年度修繕費用算出モデル(建築面積750m2・8階建て・外壁タイル貼り・総戸数75戸を想定)では、戸当りの一回の外壁修繕工事費が、およそ55万円とされています。これは、築12年〜16年程度で実施される第一回目の大規模修繕工事費用の大半にあたり、マンション購入時に一括で管理組合に積み立てる「修繕積立基金」(20万円〜30万円程度)なども、この第一回目の外壁修繕工事のために積み立てているといってもいいほどです。
また、その外壁修繕費の3割程度が、仮設足場費となるため、足場が必要なその他の工事(バルコニー床防水・鉄部塗装・パラペット周りの補修等)もこの時、併せて実施されるケースが増えています。
<外壁タイル周りの補修>
まず、工事に先立ち、パルハンマーやテストハンマーなどで、外壁タイルを打診して、タイルの浮き・はがれ・割れなどの現況調査を行ないます。
※外壁面の現況調査は、通常は、高所作業車や高所作業車が届かない高さ(9階程度以上)は、ゴンドラなどにより行なわれますが、最近は、地上からの遠隔操作によるロボット型の「外壁自動調査機」も使われるようになりました。また、実施時期としては、工事予算の見積りなどの関係から、着工6ヶ月前頃に行なわれています。
また、タイルの補修率は、建物の置かれている環境・タイルの厚み(45二丁掛けタイルなどの薄手のタイルは、剥離し易い)・目地の深さ(深目地仕上げは、タイルが浮き易い)・施工の質などによっても違いますが、マンション管理センターの過去の履歴では、全タイル面積に対する要補修面積は、15%程度(その内、貼替えが必要なものは、2〜3%)が平均的な数値とされています。
以下に、タイル周りの劣化状況別の補修方法をまとめてみます。
@タイルのみが浮いている場合
浮きタイルの脇目地部分にドリルで孔をあけ、エポキシ樹脂を注入し接着する。
Aタイル下地のモルタルが浮いている場合
浮き部分の目地に、躯体内30ミリ程度の深さまでの孔をあけ、エポキシ樹脂を注入した後、径4〜6ミリ長さ40ミリの全ネジステンレスピンを打ち、躯体と緊結する。
Bタイルとモルタルの両方が浮いている場合
この場合は、モルタルの浮きをAのエポキシ樹脂併用ピンニングにより補修してから、タイルの浮き部分をエポキシ樹脂接着する。
C目地にクラックがある場合
クラックの入っている部分のタイルをはがし、躯体コンクリート自体にクラックが発見された場合は、ひびの状況に応じた補修(竪ひびなどの大きなひびは、Uカット(又はVカット)シールで補修し、その他は、エポキシ樹脂低圧注入等)をした後、エポキシ樹脂系接着剤で新たなタイルと貼り替える。
Dタイル自体が割れている場合
この場合には、周辺のタイルや目地に浮きを呼ばないように、ダイヤモンドカッターなどで、目地に切り込みを入れタイルを撤去する。タイルの貼り直しは、Cの場合と同じ。
E化粧目地にシールが打たれている場合
タイルの補修をする時期には、ほとんどの化粧目地のシーリング材も経年劣化により硬化し、漏水などの引き金になるので、既存シールをチッパー(電動丸鋸)等で完全に除去してから、新たなシールを打ち直す。
上記の補修が完了したら、酸性薬剤洗浄によりタイル表面の油汚れ等を落としてから、水圧120〜150Kg/p2の高圧水による洗浄を行なった後、最後に、外壁面浸水抑止と汚損防止のために、外壁タイル及び目地全面に、撥水剤をローラー2回塗りで仕上げます。ただし、この撥水剤の効果は、5〜6年が限度とされています。
なお、外壁タイルの浮きやはがれは、以下の部位に多く発生する傾向にあります。
■バルコニー手摺り壁
■建物出墨部(角コーナー部)
■パラペット周辺
■塗装部分とタイル部分の繋ぎ目
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