建物を長期間安全に支えるために、地盤とともに大切なのが、建物基礎です。全ての建物は、建物に加わる荷重(固定荷重・積載過重・積雪過重)や外力(地震や風)を基礎を介して地盤に逃がすため、基礎は、十分な強度が要求されます。
また、どのような基礎を採用するかは、ハード面では、支持層の深さ・建物の過重等、ソフト面では、敷地の広さ・隣接道路状況・コスト的な要素なども加味され、決定されることになります。
では、以下に、建物基礎を体系的に考察してみることにします。
<直接基礎>
主に、支持層が浅い場合に採用されます。例えば、新宿副都心の高層ビル街の支持層(東京礫層)は、地下およそ20メートルにあるため、地下3階の深さまで根入れし、直接基礎としています。それによって、過重に対して十分な強度や転倒モーメントに対する応力を持たせていると同時に、地震力の逸散減衰効果も高めています。
※マンションの場合、オフィスビルやホテルと違い、地下部分を必要としないので、直接基礎とする場合は、もう少し浅いところに支持層が必要となります。
また、直接基礎の形式としては、一般に、布基礎・独立基礎(フーチング基礎)・ベタ基礎等がありますが、高層マンション等の重い建物で直接基礎を採用する場合は、過重を面(基礎スラブ)で支えるベタ基礎とする場合が多いようです。ただ、ベタ基礎は、他の基礎より沈下量が大きくなるので、特に、基礎面積が広い場合、不同沈下等に十分注意する必要があります。
なお、しいていえば、地震に対しては、過重や外力を分散できる分、直接基礎の方が杭基礎よりやや有利ではないかと思われます。
<杭基礎>
支持層がある程度深い場合には、直接基礎とすることができないので、杭基礎が採用されることになります。杭基礎は、その用途や現場状況・コストなどの面から、さまざまな形式や工法・材質があり、それらを組み合わせることによって、最適なものが選択されています。この多岐にわたる杭基礎に関しては、少々理解しずらい分野なので、以下にそれぞれに分類して、考察してみることにします。
[杭の形式による分類]
【1】支持杭
これは、支持層までしっかり杭を打ち込み、建物を支える形式で、マンションなどのRC建物には、最もポピュラーな形式です。
【2】摩擦杭
ある程度、軽い建物に採用される場合の多い形式です。地中の地盤の付着力と摩擦力を利用して建物を支持します。ある程度の深さの「粘性地盤層」に打ち込まれます。
【3】中間支持杭
これは、杭の周辺を部分的に地盤改良(掘削土砂とセメントミルクとを混合攪拌し固める)し、そこに、PHC節杭(高強度プレストレストコンクリート)などを建て込み、中間支持させるものです。長尺杭のコスト削減(長尺杭の半分強程度)と工期短縮のための代替工法として、利用されています。
[杭の工法による分類]
【1】打ち込み工法
その名のとおり、既成杭や鋼管杭をハンマーで打ち込む工法ですが、かなりの騒音と振動が伴うので、都市部の工事では、最近は、ほとんど行なわれていません。
【2】埋め込み工法
アースオーガーなどのスクリュー式ドリルで、杭直径より大きめの穴を掘り、セメントミルク注入によって、既成杭や鋼管杭を建て込む工法です。騒音振動は、少なめです。
【3】場所打ち杭工法
高層マンションなどの重い建物で、杭工法を採用する場合は、ほとんどこの場所打ち杭工法を採用しています。最もオーソドックスなものとしては、ドリルなどで掘り、鉄筋籠を穴の中に降ろし、トレミー管からセメントミルクを注入し固めるRC杭があります。
[杭の材質による分類]
【1】鋼杭
H型鋼杭と鋼管杭があります。H型鋼杭は、軽い建物などで杭が必要な場合、鋼管杭に小さな規格がないことから、鋼管杭の代替として使われているものです。また、鋼杭は、鋼材腐蝕を考慮し、1ミリ程度の「腐食しろ」を加えた鋼厚をみています。
【2】コンクリート杭
場所打ち杭と既成杭があります。既成杭は、さらに、RC杭・PC杭・PHC杭に分かれます。強度的には、PHC杭(高強度プレストレストコンクリート杭)が、一番強い部材といえます。
【3】合成杭
SC杭(外殻鋼管付きコンクリート杭)と鋼管合成杭(鋼管ソイルセメント杭)があります。どちらも、上記鋼管杭やRC杭に改良を加えた新しい杭材です。後者の場合、鋼管後建て込みと鋼管同時建て込みがありますが、同時建て込みの場合を簡単に説明すると、まず、鋼管の先端に取り付けた攪拌ヘッドで、鋼管より一回り大きい穴を掘りながら、同時に流し込むセメントミルクと鋼管周辺の掘削土砂とを攪拌する。そして、そのまま支持層まで掘り進めたところで、最後に、攪拌ヘッドだけを引き抜きます。鋼管とその中に造成されたソイルセメント柱の両方で支持するので、鉛直・水平支持力共に優れ、杭径・杭本数の合理化が可能となります。また、掘削残土が少ないという環境性に優れているのも特徴です。