<プロローグ>
マンションの売主により、幾分違いますが、民間デベロッパーの場合、新築マンション購入後の売主側が行なう建物定期点検は、一般に「3ヶ月」「1年」「2年」の3回になっています。特に、2年目の点検は、売買契約書に記載されている「隠れた瑕疵(欠陥)に対する瑕疵担保責任[損害賠償請求権と解除権]は、引渡し後2年間とする(宅建業法40条に基づく)」という契約上保証された重要部位以外の瑕疵責任期間内の最後の点検となりますので、購入者にとっては、非常に大事な点検となります。
※ 契約上の最低保証期間(補修請求権はなし)は、2年ですが、その他補修請求権のある瑕疵保証としては、品確法に基づく法的保証(重要部位の構造的ひび割れや雨漏り等10年)や不動産協会や売主独自に設定した任意のアフターサービス保証(重要部位10年、給排水設備・ユニットバスの漏水5年他、一般部位・設備2年間等の保証)があります。ただし、2年目以降は、売主側立会いの定期点検等は行なわれないので、あくまで、居住者(管理組合)が独力(又は、専門業者に依頼して)で瑕疵を発見して、各保証期間内に、売主に補修等の請求をする必要があります。 |
そこで、今回は、新築マンションの定期点検(バルコニー編)を考察します。
<バルコニー回りの点検>
新築マンションの初期欠陥の中でも、バルコニー回りで発見される欠陥は、比較的多く発生しています。このバルコニー部分は、共用部分でありながら、居住者に固有の専用使用権(通常無断では立入れない)があるという丁度、居住者と管理組合の管理守備範囲の狭間に位置するため、欠陥の発見については、お互いに無関心になりやすい箇所でもあります。
また、バルコニー回りの点検に際しては、極力居住者、管理組合、管理会社の三者が、一緒に点検することが大切であり、売主への補修請求も、管理組合から一括請求(他の共用部分の補修と合わせて)することが、望ましい形といえます。
※ 専有部分内の欠陥や不具合の場合も、同じ間取りや設備仕様等で、複数の同様の不具合がある場合もあるので、居住者が直接売主と交渉する前に、管理組合と連携を取って対処することも大事です。 |
さて、バルコニー回りのチェックですが、ポイントは、いずれも、各部位のひび割れを中心にチェックすることになります。以下に、民間デベロッパーによる分譲マンションの
2年目及び、
10年目点検を前提にまとめてみます。
【1】 揚げ裏(天井)部分の貫通ひび割れ(通常、品確法・アフターサービスの10年保証対象)
貫通ひび割れかどうかは、ひび割れから、白い溶出物(エフロレッセンス)が出ているかどうかで判断します。これは、鉄筋腐食の原因となるので、早めの補修が必要となります。
【2】 床付け根部分の大きなひび割れ(通常、品確法・アフターサービスの10年保証対象)
外壁との取り付け部分に沿ったひび割れで、特に幅3ミリを超える大きなひび割れは、配筋に問題がある場合があるので、電磁誘導式の鉄筋探査計などで、配筋状況を調べる必要があります。
※ 主要構造部の亀裂・破損についての、品確法やアフターサービスによる上記10年保証の起算日は、建設会社から、分譲会社へ引き渡された日です。
※ また、バルコニー床の短辺方向(主筋に平行方向)や先端部分のひび割れは、構造耐力上問題となるケースが少ないことから、原則として、補修対象外とされています。 |
【3】 RC手摺壁の大きなひび割れ(通常、アフターサービスの2年保証対象)
毛細ひび割れ(ヘアークラック)は、放置していてもよいが、幅3ミリを超えるひび割れは、雨水が浸入しやすくなるので、補修対象となります。
【4】 金属手摺りの付け根部分の腐食(通常、アフターサービスの2年保証対象)
この部分は、取り付け部(アンカー)の内部で、鋼材腐食が起こりやすく、1年未満で、かなりのさびが発生する場合もあります。腐食が進んでいる場合は、アンカー内部から改修する必要があります。
【5】 排水不良(通常、アフターサービスの2年保証対象)
これも雨漏りの原因となり、長い間には、建物の耐久性を低下させるので、改善が必要です。
※公的デベロッパー分譲の新築マンションには、重要部位のひび割れ以外のひび割れも、10年間のアフターサービスの対象としている場合もあります。
なお、「
建設住宅性能評価書」を取得しているマンション(新築後年1以内の分譲に限る)で、売主との間で、瑕疵補修交渉がスムーズに行なわれない場合は、「
指定住宅紛争処理機関」(国交大臣指定の単位弁護士会)に申請(申請手数料1万円)すると、両者の仲裁等を行ってもらえます。また、この紛争処理のための技術的基準では、
幅3ミリ以上のひび割れは、構造的瑕疵が一定程度存する可能性があるとされています。